北海道大学 大学院 環境科学院 生物圏科学専攻

フィールドサイエンスの拠点

動物生態学コース

動物生態学コースでは、野生動物および、それらと関係する植物など様々な生物を対象に、個体レベルから群集レベルまでの環境と生物の相互作用、生物同士の相互作用、生物の数と分布のパターン、および生物や生態系の保全に関する研究と教育を行います。そのために野外における調査と実験、環境を制御した室内実験、理論モデルの構築と解析、遺伝子解析など、さまざまなアプローチで研究を進めています。

動物生態学コースのホームページ -> https://noah.ees.hokudai.ac.jp/envmi/zoo/index.html

担当教員紹介

岩礁潮間帯の帯状分布。色の違いは優占する固着生物(フジツボや海藻など)の種類の違いに対応している。潮間帯の固着生物は環境ストレスの垂直勾配や種間相互作用(捕食や競争)によって、それぞれ数~数十センチの垂直範囲に分布が制限されている(野田)。

野田 隆史 教授
Takashi Noda, Professor
群集生態学、個体群生態学

 おもに海岸に生息する生物(海藻・フジツボ・貝類など)を対象に生態学的な研究を行っています。特に岩礁潮間帯(潮が引くと干上がる磯)は、調査が容易なことと、多種多様な生物が生息するなど、生態学の研究に格好の場です。そこに棲む様々な生き物を対象に、数と分布の時空間変動、生き物同士の相互作用を明らかにすることをめざした研究を行っています。くわえて岩礁潮間帯の生物への東北地方太平洋沖地震の影響や回復過程についての研究にも取り組んでいます。

揚妻 直樹 教授(副担当)
Naoki Agetsuma, Professor
哺乳類生態学、森林生態学、野生動物保護管理学

 野生哺乳類の生態・行動・社会を明らかにするとともに、人間活動が彼らの生態にどのような影響をあたえているのかを調べています。主に屋久島・和歌山・北海道に生息するシカ・サル・食肉類・コウモリ類などを研究対象にしてきました。また、過去の動物個体群の状態や生息環境についても復元を試み、自然生態系を保全する際の目標設定について検討しています。

エゾタヌキの社会システムと移出・分散の関係を糞DNAを使って分析を始めています(揚妻)。
シカの増えすぎが環境問題となっている。ところが、70~150年前までは全国各地でシカが非常に多かったことが解ってきた。もともと日本の生態系にはシカがたくさんいた可能性がある。当時の生態系がどのようなものだったのか解明する必要がある(揚妻)。

小泉 逸郎 准教授
Itsuro Koizumi, Associate Professor
保全生態学、分子生態学

 魚類や哺乳類などの野外個体群を対象に、進化生態学、行動生態学、保全生態学に関する研究を行っています。特に、生息地の破壊・分断化、都市化、外来種の侵入といった環境変化に対して、生物がどのように応答しているのかに興味があります。絶滅してしまう生物もいる一方で、生活史や行動を変化させて対応する生物もいます。フィールドワークを中心としながら、 DNA解析や統計モデリングなども取り入れて研究を進めています。最近は動物の模様や形態にも興味を持っています。

ニホンザリガニはその極端な移動性の低さから津軽海峡の陸橋化など北日本の地史を理解する上で貴重な生き証人だ。基礎的な生態を調べることにより、彼らを絶滅の危機から救うことができる(小泉)。
動物の色や模様の機能や意味は驚くほど分かっていない。サケ科魚類は模様の多様性が著しく謎を解くのに興味深い分類群である(小泉)。
食うー食われるの関係は自然界で普遍的であり、それらに特化した攻撃・防御形質がしばしばみられる。フィールドや実験室内での厳密な操作実験を行うことによりさまざまなメカニズムが検証できる(岸田)。

岸田 治 准教授(副担当)
Osamu Kishida, Associate Professor
進化生態学、群集生態学

生息環境の条件に応じて生物個体が行動、形態、生活史をどのように変えるのか?その応答は同種や他種との関係をいかに変え、群集や生態系のなかでどんな機能を果たすのか? など、環境と生物個体の相互作用に興味があります。主な対象は、両生類や水生昆虫などの池に棲む動物です。野外調査と操作実験を効果的に組み合わせることで、動物たちのしたたかな生き様や生物同士の意外な関係に迫ります。

暗闇の中を飛び回るトラフズク。多くのフクロウ類は、獲物が出す微かな音を頼りに狩りを行う聴覚捕食者だ。私たちの生活を取り巻く人為騒音が、彼らの採食効がしばしばみられる。フィールドや実験室内での厳密な操作実験を行うことによりさ率を大きく低下させていることが解ってきた(先崎)。

先崎 理之 准教授(副担当)
Masayuki Senzaki, Assistant Professor
保全生態学、景観生態学、光害・騒音害

 人間活動が生物多様性に与える影響について研究を行っています。生息地の消失・分断化といった直接的な環境変化に加えて、人工光や人為騒音を伴う環境変化が、生物個体と生物群集の双方に与える影響について調べています。陸生の鳥類を中心に、哺乳類、両生類、昆虫類など様々な分類群を研究対象としています。景観生態学的アプローチを用いた野外調査を基盤に、行動生態学的アプローチを用いた操作実験を組み合わせながら研究を進めています。

キューバソレノドン。希少故に調査は困難であり生態はほとんど知られていないが、絶滅の危機にさらされているので生態情報の収集は急務である(大館)。

大舘 智志 助教
Satoshi D. Ohdachi, Assistant Professor
哺乳動物学、動物生態学、人と動物の関係誌

 おもに小型哺乳動物を中心とする脊椎動物を対象に、生物地理学的な歴史過程と生態学的な研究を行っています。ユーラシアや北米の寒冷地域から東南アジア、インド洋海域やキューバの熱帯域までほぼ世界中がフィールドです。主に動物の移動や進化の過程を分子系統学や遺伝学、生態学的手法で行っています。また稀少種のキューバソレノドンの保護のための基礎研究も主要な目的としています。さらに最近では動物の分布の変遷におよぼす人間活動の影響の研究にも力を入れています。

北海道大学 大学院 環境科学院 / 地球環境科学研究院

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