北海道大学 大学院 環境科学院 生物圏科学専攻

フィールドサイエンスの拠点

EESセミナー

今回のEESセミナーでは、新任の先生お二人にご講演いただきます。どなたでもご参加いただけます。様々な見地から幅広い議論をいただけましたらありがたく思います。

  • 日時:2019年5月9日(木)18:15-19:45
  • 場所:北海道大学大学院地球環境科学研究院D棟D201

講演題目1:哺乳類の味覚と腸内細菌の進化 〜チンパンジーとコアラを追いかけて〜
講演者:早川卓志(環境生物科学部門 生態遺伝学分野 助教)

要旨:
動物は種それぞれに固有の食物に適応している。それは環境から適切な食物を選び出す感覚能力と、それを消化して栄養にする生理機構を持ってるからだ。ゲノム・メタゲノム解析の手法によって、それぞれの動物は種固有の採食様式に最適化された味覚や腸内細菌を持つことが近年わかってきた。演者は、ヒトやチンパンジーを含む植物食に依存した霊長類の祖先で、苦味受容体遺伝子の個数がゲノム中で増加し、植物に含まれている毒の認識に寄与しているようだというということを発見した。苦味感覚適応が野生集団でどのような行動として発現しているかを知るために、野生チンパンジーを対象とした調査もおこなっている。味覚によって適切な食物を選択したあとは、適切に消化して栄養を吸収し、排泄しなくてはいけない。霊長類の糞便に含まれている細菌を次世代シークエンサーによって網羅的に調べるメタゲノム解析によって、採食品目の違いによる適応が生じていることが明らかになった。霊長類から外に目を向けたところ、樹上のユーカリの葉に強く依存しているコアラも、植物食霊長類と同様に苦味受容体遺伝子数が増加しており、適切なユーカリの葉を選択するように進化していることが示唆された。樹上性哺乳類が暮らす森で動物を追いかけて、採食生態に注目してゲノム・メタゲノムを解析する研究を確立していきたい。

講演題目2:生物多様性の見えざる脅威:騒音に対する生き物の応答とその帰結
講演者:先崎理之(環境生物科学部門 生態保全学分野 助教)

要旨:
全球レベルで進行する生物多様性の喪失の抑制は、人類共通の喫緊の課題である。従来、生物多様性喪失の主要因として、気候変動や生息地の分断化等の土地利用変化が注目されてきた。しかし近年、陸海双方に蔓延する騒音汚染の深刻な現状が明らかになり、生物多様性への騒音の影響が懸念され始めてきた。本講演では、騒音に対する動物の応答を、行動から群集レベルに至るまで調べてきた演者の研究を紹介し、生物多様性への騒音の影響の帰結を考える。なお、本講演では、カエルや鳥といった脊椎動物のみならずバッタやトンボといった無脊椎動物に関する話題も扱う。学生を含む様々な生物に興味を持つ方々の聴講を歓迎したい。

連絡先:北海道大学大学院地球環境科学研究院 生態遺伝学分野 越川滋行
koshi*ees.hokudai.ac.jp(*を半角@に変えてご入力ください)

北海道大学 大学院 環境科学院 / 地球環境科学研究院

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