耕地圏科学コース
耕地圏を農耕地における生産活動の場と捉え、生物生産の基礎となる生物資源、遺伝資源の開発・利用・評価・保全等に関して教育・研究を行っています。本コースは北大の生物生産研究農場や研究牧場、植物園を研究フィールドとしています。農耕地においては、効率的な食料生産と将来の持続的生産を保証する管理技術が求められます。農耕地の特徴とそこでの生物生産体系と環境との関係、さらに持続的生物生産を確保するための有用資源の開発・利用に着目しています。北海道の特徴的な気候条件を活かした作物栽培や家畜飼育に関する研究、栽培・飼育される作物・家畜の改良に関する研究を進めています。また、放牧地における動物の行動観察、生産物の品質、絶滅危惧植物の保全など、耕地圏を取り巻く環境を俯瞰して持続性維持と生産性の両視点を持ちながらその課題に向き合っています。耕地圏の作物生産環境と遺伝資源に関する講義(耕地圏科学特論I )ならびに家畜生産や酪農生産システム、生物生産に関する講義(耕地圏科学特論 II)を開講しています。
耕地圏科学コースのホームページ -> https://www.fsc.hokudai.ac.jp/farm/agroecosystem/
担当教員紹介
星野 洋一郎 教授
Yoichiro Hoshino, Professor
園芸作物、生殖、植物遺伝資源、小果樹
地域の植物遺伝資源に着目して、その評価と利用に関する研究を行っています。特に北海道の環境に適した植物遺伝資源に着目し、小果樹のハスカップやラズベリーなどのベリー類の野生遺伝資源調査、多様性解析、栽培法の確立、機能性成分の分析、野生種を用いた種間雑種育成の研究を行っています。また、花卉園芸植物の受精メカニズムの解析、組織培養等の研究を進めています。
後藤 貴文 教授
Takafumi Gotoh, Professor
家畜栄養生理学、家畜生体機構学、代謝プログラミング、和牛、IoT&Space放牧管理システム、牧草牛肉
ウシは本来ヒトが消化できない植物中繊維質を分解吸収し、タンパク質源として食肉を生産し、ヒトに供給する物質循環機能を担う草食動物です。現在の牛肉生産は、高騰する輸入飼料の多量給与による経営困難、糞尿の処理問題、BSE 等食の安全、霜降り肉志向に硬直したマーケット及び飼養におけるアニマルウエルフェア等、多くのシフトすべき課題を抱えています。一方、日本は山地が多い上に荒廃農地や過疎化による限界集落の増加等、多くの問題も抱えています。しかし、そこには植物資源があります。新しい生物科学概念「代謝プログラミング」研究をシーズとして、ウシの代謝についてエピジェネティクスを応用した飼養方法で早期に制御し、飼料には日本の豊富な植物資源を放牧活用する研究しています。また、その飼養管理には先端ICT や宇宙技術を活用する研究を行っています。販売には、エシカル(倫理的な)ダイレクトマーケット構築を検討しています。このような取り組みにより、若い農業者が未来に希望をもち、産業として世界と戦えるような畜産業の構造改革を目指して、牛肉生産のシステムデザイン的研究を行っています。
河合 正人 准教授
Masahito Kawai, Associate Professor
家畜飼養学、家畜管理学、家畜行動学、
土地利用型家畜生産システム
ウシとウマは同じ草食家畜でありながら、採食量や消化率といった飼料利用性、反芻の有無を含め、採食時間や放牧地での採食植物種、活動場所といった採食行動が異なります。こうしたウシとウマの採食および消化戦略を比較し、明らかにすることで、家畜種ごとに適正な放牧・飼養管理方法について検討します。また、土地利用型家畜生産システムとして、とくに森林や野草地を未利用飼料資源としてとらえた放牧に着目し、生態系を維持しつつ長期的、持続的に利用可能な放牧管理方法について検討します。
中村 剛 准教授
Koh Nakamura, Associate Professor
植物園学、絶滅危惧植物、保全遺伝・保全生態、植物地理・分類学
世界の植物の20-50%が絶滅危機に瀕し、その保全は人類の最重要課題です。植物園を活用し、北海道・東北アジアの絶滅危惧植物の保全研究を行います。海外フィールド調査を行って国家間における絶滅危惧種の分類混乱を解消し、固有性と保全優先度をグローバルに評価します。そして、種の遺伝的多様性を守る自生地保全の枠組みを国境にとらわれずに決定して保全策に役立てます。さらに、植物園における実効的な生息域外保全の仕組み作りと社会実装の研究を行い、絶滅危惧植物の保全科学を確立します。
鈴木 裕 准教授
Yutaka Suzuki, Associate Professor
動物栄養生理学、消化管機能、腸管免疫、細菌叢
主要家畜であるウシの消化管は出生直後では未発達であり、牧草などの飼料を消化する能力が低い状態にあります。消化機能の鍵となる共生微生物や、宿主の消化管組織が発達するメカニズムを明らかにし、ウシが持つ資源変換能力を高めることを目指した研究を行っています。腸管防御機能に関する研究も行っており、免疫機能が未熟な子牛の生育をサポートすることで生産ロスや環境負荷を低減し、効率的な飼養・生産システムへの貢献を目指しています。
平田 聡之 助 教
Toshiyuki Hirata, Assistant Professor
局所環境、時空間動態、作付体系、草地生態学
近年の作物生産では、原料の枯渇懸念による肥料価格の高騰や水資源の不足による生産コストの増加、肥料・農薬や温室効果ガスの圃場外への流出に対する懸念などへの対応が求められています。これらの問題に対し、北海道の栽培環境に適応した作物の栽培様式の効率化を中心として研究に取り組んでいます。現在は、低投資・低環境負荷型の作付体系として、緑肥作物の有効的利用や耕耘を行わない不耕起栽培の効果について総合的な評価を行っています。