【研究へのご協力のお願い】サルミンコーラの情報・標本を募集しています

お久しぶりの投稿です。修士課程2年になりました、長谷川です。

さて今回は、私がかねてから研究対象としている寄生虫「サルミンコーラ」の分布情報・標本提供を呼び掛けたく、この記事を書いています。

以前からブログでたびたび紹介しているように(道南でのサルミンコーラの調査の様子)、私は寄生性カイアシ類であるSalmincola 属(サルミンコーラ属、日本語ではナガクビムシ科ヤマメナガクビムシ属)というグループを対象に研究を進めています。サルミンコーラ属はサケ科魚類のエラや口に寄生する甲殻類のグループで、北半球全域に現在20種ほど生息しています(Kabata 1969; Bowen & Stedman 1988; Shedko & Shedko 2002; Burdukovskaya & Pronin 2016など、ノルウェーにもサルミンコーラの標本提供者を探しに行きました。)。

この記事ではこのグループに含まれる種を総称して、サルミンコーラと呼んでいきます。

イワナナガクビムシSalmincola carpionis (北海道大学理学院 修士課程1年 村上玲央 撮影)

イワナに寄生するサルミンコーラ(イワナナガクビムシ, Salmincola carpionis )(北海道大学理学院 修士課程1年 村上玲央氏 撮影)

日本には少なくとも以下の3種が分布していることがわかっています。

Salmincola californiensis(ヤマメナガクビムシ、宿主:ヤマメ、アマゴ、ニジマスのエラに寄生)

Salmincola carpionis(イワナナガクビムシ、宿主:イワナ、カワマス、稀にニジマスの口の中に寄生)

Salmincola stellatus(イトウナガクビムシ、宿主:イトウの口の中に寄生)

イワナの口の中に寄生するイワナナガクビムシSalmincola carpionis

イワナの口の中に寄生するサルミンコーラ(イワナナガクビムシ Salmincola carpionis

エラに寄生するSalmincola属の一種

オショロコマのエラに寄生するサルミンコーラ(北海道大学 中川研究林 馬谷佳幸氏 撮影)

 

サルミンコーラの仲間にはいくつか面白い特徴があります。

① 種ごとに寄生する宿主や寄生する部位が決まっている。

例えば、イワナに寄生するサルミンコーラ(イワナナガクビムシ, Salmicola carpionis )は基本的にイワナの仲間(エゾイワナ、ニッコウイワナなど)のみに寄生します。

また、寄生する部位も強く決まっており、基本的にイワナに寄生するサルミンコーラはイワナの「口の中」に寄生します。

これらの特徴はおそらく宿主(魚)とサルミンコーラが長い時間をかけて、共に進化してきた(共進化と呼びます)結果と考えられています(Poulin 1992)。

② 宿主に強い悪影響を与える

サルミンコーラは古くから養殖場や水族館で発生して、魚にダメージを与える悪者として知られています。

例えばエラに寄生する種は宿主の卵の数を減少させたり(Gall 1972)、エラを傷つけるため、呼吸を阻害することも知られています(Sutherland & Wittrock 1985; Herron et al. 2018)口に寄生する種は、宿主の食欲を落としたり、口内を腫れさせ、最終的には以下の写真のように宿主をひどくやつれさせることも知られています(Nagasawa et al. 1998)。

上は感染されていないイワナ、下は4個体のサルミンコーラに感染され、ひどくやつれたイワナ

上は感染されていないイワナ、下は4個体のサルミンコーラに感染され、ひどくやつれたイワナ

ここまで影響が強いと魚の成長や生存にまで影響を与えている可能性が高いです。

非常に生態学・進化学的にも面白い分類群ですが、野外での生態は驚くほどわかっていません。例えば、どんな場所にどのぐらいの個体数がいるのか、野外ではどの程度宿主に影響するのか、全くわかっていません。。

そして日本国内に限っては、どこに分布しているのかもわかっていません

そこで皆さんからサルミンコーラの分布情報と標本を募集しています!

 

もし渓流釣りなどをしていた際にサルミンコーラを見かけたら、以下の情報や写真を下記連絡先までご連絡いただきたいです。

【募集情報】

① サルミンコーラを見かけた日にちと場所(なるべく細かく教えて頂けると助かります)

(例:2020年5月14日に、石狩川水系豊平川の**沢でみかけた、など)

② 寄生されていた魚の種類

③ 寄生されていた魚とサルミンコーラの写真

(魚の名前が分からなくても、写真があればこちらで種判別を行います。写真は「寄生されていた魚の全体像が分かる写真(以下の写真1)」と「サルミンコーラが魚に寄生している状態が写るように、アップで撮った写真(以下の写真2)」の両方があると大変助かります。)

写真1 魚の全体像が分かる写真

写真1 魚の全体像が分かる写真

写真2 サルミンコーラが写るように撮られた写真

写真2 サルミンコーラが写るようにアップで撮った写真

また以下の情報も覚えている限りで構いませんので、教えて頂けると大変嬉しいです。

④ その場所でサルミンコーラが寄生されていた魚の割合

(例:**川では15匹釣ったうちの3匹が感染されていた、など。大体の数字で大丈夫です)

⑤ 1匹の宿主に寄生していた、大体のサルミンコーラの数

(例:1匹のイワナに大体3-4匹ぐらい寄生していた、など。大体の数字で大丈夫です)

さらに、サルミンコーラの遺伝子を解析することで、日本におけるサルミンコーラの多様性や分布がどのように広がっていったのか、明らかにしたいと考えています。そこで可能な方は、サルミンコーラの実物を下記連絡先に送っていただきたいです。実物を送っていただける方は、サルミンコーラが魚に寄生した状態で魚ごと冷凍して頂き、クロネコヤマト(ヤマト運輸)のクール冷凍便の着払いで、下記住所・曜日指定でお願いいたします。

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【連絡先】

〒060-0810 北海道札幌市北区北10条西5丁目

北海道大学大学院 環境科学院 小泉研究室 A505 (標本の送付は月曜・水曜・金曜の10時〜16時)

修士課程2年 長谷川稜太 ryotahase344922 (at) eis.hokudai.ac.jp (atを@に変更)

(一部、上記アドレスにメールが送信できない方がいるようです。送信できない方はryotahase344922(at)gmail.com (atを@に変更)へお願いします)

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「〜川で昔見た気がする」というような、どんなに些細な情報でも構いません。

情報をお持ちの方、標本を送ってくださるという方は、まずはメールにてご連絡ください。

みなさまからの情報、お待ちしております。

ご協力宜しくお願いいたします。

※得られた分布情報は研究にのみに使用し、他者への不用意な拡散はいたしません。

※また魚の採集は特別な許可を得て行い、採集した魚は原則、元の地点に活かしたまま再放流します

長谷川