研究のプレゼン|フォントと色づかい

はじめまして!

修士1年の植村です。

いよいよ、生態学会が来週に迫りましたね〜

生態学をまなぶ者としては、一年間の集大成になる学会とも言えるでしょう!

 

さて、学会しかり、普段のゼミしかり、研究コミュニティでは、やたらと発表を求められます。

個人的には、ものごとをアウトプットする力を鍛えて考えを自分の中で整理するために重要だとも思っていますが、実際のところ、発表者の目の前(or Zoom 越しのお茶の間)には視聴者がいます。

つまり、その方たちに伝わるようにしないと、何のことやらサッパリ!向こうもこちらもモヤモヤするでしょう。

何が言いたいかというと、自分主体の研究といっても相手に伝わらなければ、その研究を高めることが難しくなる。。。

逆に言えば、ほんの少しだけでも相手に伝わりさえすれば、研究は何かしら前進するいうことです

(と思っています)

 

そこで今回は、「へんなこだわり??第一弾」として、フォントマニア&色おたくの私が、少しでも伝わるプレゼンをするためにしているルーティンを紹介します。

独断と偏見のかたまりですが、ご容赦ください笑

では、どうぞ〜!!

 

フォントはほんとに大切

1.文章に使用するフォントを決める

私の場合、プレゼンの内容をある程度つくったあとはフォントで悩みます。なぜなら、フォントは種類によって、みた人に与える印象が全くことなるからです。

基本的に、プレゼンに使用するフォントは OS 標準フォントから選ぶようにしています。ここから選べば、macOS と Windows とのやりとりで変なフォントに誤変換されることは、ほとんどありません(改行によるらズレは起こるかも)

  • 和文|ヒラギノ系か、游明朝体/ 游ゴシック系
  • 和文 + 欧文|ヒラギノ系/ 游ゴシック系 + Arial/ Calibri/ Helvetica/ Segoe 系/ Tahoma/ Times 系
  • 欧文|Calibri/ Segoe 系

和文 + 欧文で、よく、メイリオを使用している方を見ます。その名は「明瞭」から来ているとかいないとか。もちろん UD フォントに近く、見やすいのですが、なにかぼってりした印象があり、多くの人が使用しているのでオリジナリティは低い。なので私は、研究発表には敢えて使用していません^^;

また、欧文を使用して種の学名を入れるときなどは、きっちりイタリック体になったように見える Calibri や Segoe を使います。Arial や Helveticaは、「Italic」と表記していても、実際には、そのまま斜めな倒しただけのオブリーク体(斜体)になってしまうので、私のように気になる人は、気になります。

Fig1

イタリック体(左)とオブリーク体(右)の違い。 図中の赤丸は、イタリック体でデザインが異なることろ。 イタリック体は、もともと違う言語を表現するために使われてきたモノとされています。オブリーク体の起源は諸説ありなのでなんとも言えませんが、ただ横に倒しただけということは変わりません。

 

2.フォントのウェイトやサイズ感をみてバランスをさぐる

どのようなプレゼンにするか、にもよりますが、文字が多いプレゼンだと、フォントのウェイト(太さ)を落として長く読んでも疲れないよう心がけます。一方で、文字が少ないプレゼンの場合だと、強調をどうするか?ということに悩むので、ウェイトの抑揚をつけます。

しかし、昨今 Zoom などの普及により、プレゼンを会場で後ろから観ることも少なくなったので、比較的小さい文字(だいたい18–20 pt)でも読めなくないはない状況もうまれています。ただ、20後半から30 ptの文字は、やはり読みやすい。文章やタイトルは、このくらいがほどよいですね。

そして、サイズ感で何より大事なのは、全体、そして、1枚のスライドの中のフォントサイズのバラツキだと考えています。

たとえば、スライドのタイトルを30 ptと決めたとします。それはブレないようにします。タイトルの文字数が多くなるときは、全スライドをとおして、最大文字数をみてから決めます。一方、1枚のスライドのなかでも、どうしてもフォントサイズはバラツキがちです。例えば、①タイトル、②説明文章、③図の軸名、④引用、⑤スライド番号、、、など。

わたしの中で、このバラツキが多いほど目移りしてしまいます。ですので、それが少ないほど、スッキリした印象を与えるだけでなく、強調するところ弱めるところの緩急がつきます。

3.図のフォントはどうすべきか悩む

図のフォントは、どうすべきか。これは永遠の課題です笑(わたしの中で)

というものの(いちおう)きちんと検証されていて、論文中の図のフォントについては、構造式や軸の数値干渉などから「Arial や Helvetica を使おうね」とされています(Buriak, 2016, Chemistry of Materials)。

しかし、最近の論文の図を見ていると、軸の数値をセリフ体でかいているモノも多く見られ、セリフ体でも個人的には違和感がなくなってきました。

その一方で、大手論文出版社の Wiley 社は図だけではなく、文章もサンセリフ体に統一されてきましたね(下図)。細めのサンセリフ体なので、読んでいても疲れにくくなっています。

セリフ体とサンセリフ体、どちらにも良さがあるのでなんとも言えませんが、個人的には文章はセリフ、図はサンセリフが好きかなあ。。。

みなさんは、セリフ or サンセリフ、どっち派(?)でしょうか?

Wiley 社(上)と Springer 社(下)の最近の論文の文章フォントの違い。Wiley 社の方は「Carlito」、Springer 社は「Nimbus Roman No. 9」(フォント検索サイト「IDentifoNt」から推定)。※図中の「WILEY」と「Springer」はロゴとは異なるフォントです。

Wiley 社(上)と Springer 社(下)の最近の論文における文章フォントの違い。Wiley 社の方は「Carlito」、Springer 社は「Nimbus Roman No. 9」(フォント検索サイト「IDentifoNt」から推定)。(注)図中の「WILEY」と「Springer」はロゴとは異なるフォントです。

 

4.悩む…やっぱりフォントが決まらない!!

このフェーズにいくことは、ほとんどありません。よっぽどでないと。

もし、このフェーズに達したら発表そのものをやめましょう。そして、内容をみつめなおしましょう。

しかし、広い世の中には、フォントに悩んで夜も眠れない、そんな方がいるかもしれません。

そんな時に便利な web サイトを列挙しておきます。

  • WhatFont|Goggle Chrome の拡張機能
  • Identifont|フォントの形からフォントを検索するツール
  • ingectar-e|「3色だけてセンスのいい色」(2020)はじめ、フォントや色、デザインに関する書籍を扱う会社のHP
  • 伝わるデザイン|千葉大学 群集生態学研究室の高橋博士らによる著書「伝わるデザインの基本」(2016、技術評論社)をベースに作られたサイト。フォントだけではなく、研究におけるデザインについて色々なことが書かれています。

 

色づかいをみなおす

1.色覚異常ではなく色覚多様性

みなさんは、遺伝学の用語集「遺伝単」なるものをご存知ですか?

その中の「色覚異常」という言葉が、2017 年「色覚多様性」へ改訂され、当時ちょっとしたニュースになりました(その経緯)。

普通とは何か?が常に問われる時代背景ともあって、ことばもどんどん変わっていきます。ですので、この改訂には個人的に賛成です。

私も学部の時のある知り合いに、色覚多様性のうち、green と red とを見分けるのがむずかしい「Red-Green Confusion」の方がいました。意外かもしれませんが、このような色覚をもつひとは少なくありません。

実際、生態学会のホームページにも年大会ごとに毎度「色覚多様性への配慮」というページがあります。そのくらい「色覚多様性」と向き合うことが当たり前になってきています。

2.それでも好きな色をつかう。そして、仕上げへ

それでも、色覚多様性のことを意識しすぎてプレゼンに使用する色が限られてしまうことに、ややストレスを感じることがあります(本末転倒感?)。

そんな中、出会ったのが「Color hunt」と「Sim Daltonism」です。

  • Color hunt|こんな組み合わせ、あったらいいな!という色の組み合わせを自由に投稿できるサイト。何も考えずにして、気に入った色のくみ合わせを選ぶことができます。イラストとかも使いたいけど、色が増える。そんな時にこのサイトを参考にしています。
  • Sim Daltonism|色覚多様性の場合、その色がどのように見えているか確認できるアプリ。現在は、iOS 版とmacOS 版しかないようです。研究者でも使用されている方を何人かみかけました。プレゼンが大体完成して、仕上げの時に必ずこれで確認します。これで、少しでも変に見えるかも?となったら、色を考え直します。

 

Fig3

macOS アプリ「Sim Daltonism」を使用した、「Normal Vision」(左)と「Red-Green Confusion-Deuteranopia」(右)での色の見え方の違い。よくある比較図ですが、Red-Green Confusion にもいろいろあるようです。

 

 

プレゼンにおけるフォントと色づかいまとめ

  1. フォントの種類を選ぶ
  2. フォントの太さを決め、バラツキを考える
  3. 色覚多様性を再度理解する
  4. お気に入りの色の組み合わせを選ぶ
  5. 仕上げ。でもやっぱり色覚多様性の場合を考える

 

 

 

。。。いや〜結構、長々と駄文を書いてしまいましたね(特にフォント)。

でも、伝えたいことはもっとあります笑

しかし、ブログ1回の許容量を超えるかもしれないので、今回はここまで。

 

このブログをみて下さった方のなかには「研究発表のときに毎回これやってるの?流石に疲れるのでは??」とか思う方もいらっしゃるかもしれません。

けど、いいんです。好きでやっているので。というか半分趣味です笑

でも、そこにちゃんと背景があるのは大事だと思います。感覚ではなく、理由がある。

だからこそ、ただ研究を伝えるのではなく、伝わる研究をしようとこころがけています。

研究プレゼンの中で、フォントや色づかいって、どうでもいいようで結構大切な要素なのかもしれません。

 

さてさて、冒頭に戻りますが、来週から生態学会が始まります。

ここでは、いろいろな研究が見られるのは当然のこと、私にとっては、いろいろなプレゼンを見られる絶好の「展覧会」でもあるので、非常に楽しみです笑

そして、今回のブログを機に、生態学会はじめ、普段の研究のプレゼンのなかで、フォントとか、色づかいとか、少し気にしてみてみよう!という方が増えるといいなあ〜と思っています。

 

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。

それでは、また、次回の「へんなこだわり??第二弾」でお会いしましょう!!

 

 

(植村)

 

P. S.

小泉研のメンバーも、ほぼ全員、生態学会で発表する予定(というか年間行事の一つ!)です。お楽しみに〜!!

ちなみに、私は、3/19の夕方 G03-07 です(ちゃっかり宣伝)。

お時間ある方、みにきてください…ネ!!!