京都の小学校と函館の女子校でアウトリーチ

小泉です。久々のブログです。フィールドや諸々が終わって少しだけ落ち着きました。今年は新たなフィールド朱鞠内湖を満喫していました!(学生からブログ報告ある???)

朱鞠内景色

北欧フィンランドを思い出す朱鞠内湖の風景。日本最寒-41.2℃を記録した幌加内町にあります。11月末現在で既に積雪1mとか。。。

 

今年は一般市民向け講演も多かったですが、印象に残ったアウトリーチが2つありました。

まずは京都府宇治市にある笠取小学校

山の中にある小学校で、校舎のすぐ横に川が流れている恵まれた自然環境にあるそうです。全校生徒約20人、教職員10人程度という小規模学校だそうです。

片田舎の小さな学校ですが教育方針が素晴らしく、生徒自らの疑問を大事にし、なぜだろうに対する答えを探すのを先生方が全力でサポートしているようです。

この方針自体は多くの小学校も掲げているとは思いますが、周りの自然を上手く利用して実践しているのに感銘を受けました。小規模ならではのメリットも活かしています。

 

ある時、大雨の後に校舎の横を流れる川を見て「この氾濫した中で魚はどうしているんだろう?」と、生徒たちが疑問に思ったそうです。

教育方針として「ネットは使わずに自ら考えて実践する」ということで、バケツの中に魚を入れて水流を作って泳ぎを観察したり、その中に石を入れてどうなるか調べたりして、自分たちなりの答えを考えたそうです(しかもサワガニでも同じような実験を行なっているようで、魚と水生昆虫では洪水の影響を調べた研究がありますが、河川性のカニで調べた研究は世界的にもほとんどないです)。

その後、先生がインターネットで調べたところ、私が書いた「洪水中に魚はどうしているのか?」という記事を読んでコンタクトしてくれました。

可能であればオンラインで子供たちの意見を聞いてコメントして頂けると嬉しい、とのことでした。

確かに、オンラインであればこんな離れた場所でも気軽に遠隔授業できるよな、と思いました。こちらにとっても貴重な機会なので二つ返事で承諾しました。

当日の発表で生徒たちは緊張していたということですが、そんな印象は全くなく、みんな大きな声で堂々と自分の考えを発表してくれました。自分の子供と年齢が近いこともあり、みんなとっても可愛くて、一生懸命発表する姿に感激しました。

学校が置かれている環境もいいし、先生たちの熱意が素晴らしく、生徒たちも好奇心いっぱいで真っ直ぐに育ってるんだろうなという印象を受けました。今のネット時代にあって、自然の中で自発的に学んでおり本当に素晴らしいと思いました。自然や生き物の理解は当然のこと、きっと一般社会に出ても自分で問題を見つけてそれを解決できるような大人になるんだろうな、と希望が持てました。

実はこの小学校、人数は少ないのですが、大部分は地元ではないらしいのです。この教育環境・教育方針を知っている都会(現地比)の親御さんがわざわざ笠取小学校に入れているみたいです。そりゃいい生徒さんも来るだろうな〜と少し納得でした。

 

いやぁ〜、よかったです (*^_^*)

 

ちなみに前回の記事「最近の若者は・・・」ではネットの有効利用により優秀な人材がニョキニョキ出てきてる話をしましたが、やっぱりリアルも大事です。笠取小のように、まずは自分で考えて、考えて、考えて、考えてから、最後にネットで答え合わせや情報のアップデートを行う、というのが現代のベスト学習ではないかと思います。

 

2つ目はその約1週間後の先端科学移動大学でした。

先端移動大学記事(北海道新聞)

北海道新聞(令和3年11月10日)。許可を得て掲載。

 

これは北海道青少年科学文化財団が主宰しており今年で30回(30年)目だったそうです。

正直申し上げるとこの財団のことは存じ上げなかったのですがネットで調べると、髭の殿下こと寬仁親王が名誉評議員を行っていたり(現在は長女の彬子女王)、元北大総長や副学長など錚々たるメンバーが役員を務める非常に伝統と権威がある財団でビビりました(笑)

でも何より驚いたのは財団を引っ張っているのが87歳で現役バリバリの事務局長でした(!?)
声や外見から70代かと思っていたのですが歳を聞いて腰を抜かしました。。。最近自分の歳を感じていたのが恥ずかしくなりました。同時に、それくらいの年齢でもこれだけ元気でやっていけるんだと希望にもなりました(若い人からも年配の人からも希望を貰ってばっかりですね 笑)

 

そしてアウトリーチ先は函館の遺愛女子高校

こちらの高校も初めて聞いたのですが、Wikipediaで調べると設立1874年の超伝統校!

当時アメリカの牧師が函館を訪れた際、女子教育の必要性を強く感じて設立したそうです(牧師、異国の地で行動力半端ねぇ。。。)。

今でも男女格差とかダイバーシティとか色々言われていますが、140年前はほんと凄かったんでしょうね。。。

 

そして私世代にひっかかる情報としては、遺愛女子はYUKIさん(元 JUDY AND MARY)の母校!
JAMが特別好きだったというわけではありませんが、私世代だと青春時代にいつも音楽が流れていました。それだけでテンション上がります⤴︎

 

校舎も伝統的な建物が残っていて、ちょくちょくドラマやCMの撮影などにも使われているそうです。有名な講堂(?)は現在改修中のため使用できないとのことでしたが、それでも見たこともない背の高いオルガン(?)のある素敵な講堂でした。今まで学会発表や講演会を行った中でもトップクラスの会場でした。

遺愛女子講演

遺愛女子高校の会場。左奥に見える木製の高い構造物がオルガン?とても雰囲気があっていい会場でした (^^) こちも許可を頂いて掲載しています。

 

ちなみに私がこれまでの講演の中で一番印象に残っている会場はイギリス水産学会の年会で行われたアバディーン大学(スコットランド、1495年設立!)の講堂です。レンガ造りの重厚な建物で天井はステンドグラス。会場は傾斜(スロープ)がついておりぐるっと半円形になっており、全員が中心の壇上を向いている感じです。ほんと、遺愛も含め、会場が良いと緊張するよりテンション上がってワクワクしますね!

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アバディーン大学の講堂。歴史と伝統を感じます。

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2006年当時、海外学振でフィンランドでポスドクをしていました。ヨーロッパ圏内は気軽に移動できるのでいろんな学会に参加しました(当時はコロナ禍なんか想定していませんでしたよね)。一緒に写っているchairpersonは進化生態学で著名なJeff Hutchingsです。講堂の全体像はないですがすっごく良かったです。演者の格好が少しマッチしていないようにも見えますが。。。(^^;)

 

先端科学移動大学では学校側が講師(と内容?)を選んでくれるみたいです。女子校から「動物たちの恋人えらび」でリクエストを頂いたのはとても光栄でした。

事前に校長先生とお話したところ「ノリはいいと思いますよ。ただ1、2年生の合同なので少し大人しくなるかも」とのことでした。150−200人の参加ということでドキドキしますね。

ただ「動物たちの恋人えらび」というフレンドリーなタイトルながら、実際の内容は浮気や乱婚。。。女子高校生にはどうかな〜、と一抹の不安。。。(^^;)

昨年、メイン調査地、南富良野町の生涯学習「千里大学」で「オトナの生態学」を行った時はもっと際どい内容満載でとても盛り上がりましたがw

あと、ミッション(キリスト教)系で進化の話、、、まぁこれは大丈夫ですよね。

色々考えた結果、ヤツメウナギの乱婚の話はやめることにしました(笑)
まぁ、取りやめた一番の理由は、ヒトの性選択に関しても話したかったので時間が足りなそうだったことですが。

 

そして実際の講演は。。。

 

めっちゃ楽しかったです!

 

80分があっという間に過ぎました。

みんな本当にレスポンスが良くて、狙ったところはもちろん、普通に話してるところでも大きなリアクションをくれてとても新鮮でした。

例えば「この研究は北海道新聞で取り上げて頂きました」とかいうと「おぉ〜」と言いながら一斉に拍手してくれたりします。リスの写真を出したら「かわいい〜」、チョウチンアコウの繁殖システムの話をしたら「うわ〜」「グエェ〜」「ウゲェ〜」(とても珍しい一妻多夫。オスがメスに寄生して最終的に体全体がメスに吸収される)。あとは「繁殖スケジュール」という言葉でなぜかウケたり(確かにヒトに置き換えて考えるとそんな言い方しないよな)。

もし発表の成功度がデシベル(dB)評価だったら、過去の発表・講演の中で一番だったと思います 笑

質問してもみんな積極的に答えてくれました。例えば「なぜ一夫一妻の鳥のメスが浮気するのか?」という問いかけに対しては「自分の子どもじゃなくてもパートナーのメスがいっぱい子どもを産んでくれるとオスが喜ぶ」とか「そもそも鳥はつがい相手とか認識していない」といったユニークな回答をしてくれました。こちらとしては正解(*1)よりも自分で考えたオリジナルな仮説を聞けるのが一番楽しいです。

*1 多くの生態学的現象には「正解」と言えるものは少なく、厳密には「現在、多くの研究者から受け入れられているもっともらしい仮説」です。自然界は多くの要因が複雑に絡み合っているので、これ!と原因を絞り込むのは難しいですし、何と言っても動物や植物は人が分かる言葉で伝えてくれませんしね。

 

いやぁ〜、女子校いいですね(笑)

 

最近は男女平等の流れもあり伝統的な女子校や男子校も共学化されてきていますが、多様性の観点からは逆に女子校、男子校が残っていても良いと思います。大学でも女性教員割合や外国人教員割合を2030年までに30%に引き上げるとか目標を掲げており、それ自体は賛成ですが、どこの大学・部局でも一律に30%ではなく、場所によっては100%や0%があってもいいのではないでしょうか。その方が多様性が保たれ、それぞれの強みを活かせられる気がします。

ちなみにこれは生態学の言葉で言うと「全体の多様性(γ多様性)は変わらないが(例えば日本の大学の女性比率30%)、各地域内での多様性(α多様性)を最大化する(各大学で女性比30%)のではなく、地域間の多様性(β多様性)を高める(大学ごとに女性比が異なるが平均すると30%)」といった感じです。たとえ全体の多様性が同じでも、α多様性よりもβ多様性が高い方が、集団全体の存続性が高いとか、生態系機能が高いとか、良くありそうな話です(原著論文調べてませんがすぐ見つかると思います)。

 

。。。と、最後は少し生態学っぽい話に持っていって、男子校のような小泉研の存在意義を暗に語ってみました(笑)

まぁ個人的には形はなんでも良くて、時代の中で、与えられた環境の中でベストなパフォーマンスを考えるのが大事だと思っています。

老若男女、国籍問わず研究室にお越しください(遊びに来てもらうだけでも)!

 

小泉