コネもツテもない海外渡航,でも何とかなる!

ただいま日本!渥美です!夜8時まで明るい初夏のシドニーから,4時には日が暮れ雪降りしきる札幌に帰ってきました。気温差-40℃。まじやばい風邪ひく。

今回のUniversity of New South Wales(UNSW)訪問は本当に思い付きでした。小泉さんに「会うべき人がいる。俺も会ったことないんだけど笑」と中川震一さんを教えていただき,勇気を出してメールしてみたのです。渡航の理由はただ一流の研究室を見てみたいというだけで,何の共同研究アイデアもありませんでしたが,震一さんは快く僕を迎えてくださいました。

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学内の移動カフェ。シドニーはラテ系がとても美味しいです。軽やかでくせのないとても良い味です。

これどーこだ?

これどーこだ?

震一さんは,60を超える共同研究を走らせる世界きっての超売れっ子研究者です。ブレインストーミングが速いのなんの。知識や人脈の広さ,経験に基づいた嗅覚がずば抜けています。そこになんとかしがみついてあるテーマに落ち着き,無事に新しく研究を開始してその骨組みを作ることまでできました。間違いなく僕のキャリアの中で一番良い研究になるはずです。

こたえ:図書館です。

こたえ:図書館です。

さて,University of New South Walesの進化生態学ユニット(Evolution & Ecology Research Centre)には震一さんの他にも物凄い人たちが揃っています。例えば生活史進化とEpigeneticsのRussell  Bonduriansky博士,群集生態学のWilliam Cornwell博士など。この組織の良いことは,教員同士の仲がとても良いことです。教員も学生も研究室の垣根を越えてみんなが仲良い。理由は2つ。①パーティーが多い,②オフィスが開放的。

UNSWはエンターテインメントが徹底しています。なんと博士学生の中間発表・最終発表は10分にも満たないライトニングトークで,終わったらみんなで立食パーティーです。ワインやチーズは無料で振舞われます。毎週末の公開セミナーが終わったらやっぱり立食パーティーです。教員陣の間では,週一回 任意参加で副学長と一緒にビール片手にいろいろ話し合う会もあるのだそうです。日本では業務になってしまうことにエンターテインメントを仕込んでいくのがUNSW流なようです。

僕には,この開放的なオフィスは常にやや緊張感があってしんどかった…笑
なぜなら,僕は長時間グダグダ作業型の人間だからです。ちょっとがんばったらまとめサイトをみて,また頑張ったらWikiサーフィンをして…みたいな感じ。周りの目がいっぱいある開放的なオフィスでこんなスタイルははばかられます。まあ周りの外人もめっちゃYoutubeとかFacebook見てるんですけどね!笑

日本人には僕のようなグダグダ型の院生,多いんじゃないでしょうか?一方でUNSWの学生は徹底して家に帰ります。朝10~11時に来て夕方5時には帰ります。今回僕は別の研究室の学生同士でのシェアハウスに泊めてもらっていましたが,家も超デラックスです。広いリビングにはソファーが並び,キッチンにはデカいオーブンがあり(おかげさまで僕は週3でオージービーフステーキを食べてました ー なんたって100g200円弱!),夜はプロジェクターでコメディーやドラマや映画を見て,ペットと戯れて…。こりゃあ帰りたくなるわ。彼らの人生エンジョイっぷりに僕は劣等感を感じざるを得ませんでした。

そんな人生エンジョイ勢の彼らがなんでいい論文をたくさん書けるのでしょうか。学生と喋っていても,もちろんすごい学生の割合は日本よりも高いのですが,全員が全員すごいわけではありません。でも日本の学生より圧倒的にいい雑誌に論文を出していきます。その理由を僕なりに考えてみました。

1.学生への淘汰圧―博士課程の学生はみんな競争を勝ち抜いて奨学金を貰って研究しています。つまり,研究計画や仮説を立てられない人たちは最初からふるい落とされるのです。

2.複数の指導教官を持つことが多い。

3.教員陣のレベルが半端じゃないー生態学・進化学での最高峰の雑誌にポコポコ論文を出している人たちがほとんどです。

4.学生が積極的に教員とミーティングする。

3にはとても面白い背景があります。UNSWは数年前,人件費削減と新規教員雇用のために大ナタを振るったのだそうです。論文数や外部研究資金獲得などの複数項目でパフォーマンスが低い教員陣に,「講義専門の教員になるかクビか?」と迫ったのだとか。すごい!僕がまさに日本の大学にやってほしいと思っていたことがUNSWでは行われていたのです。講義専門の教員を置くことで研究型の教員は自身の研究と研究教育に専念できます。コネに関係ない雇用ももちろん大事ですよね。

 

 

今回のインターン,僕にとって本当に素晴らしいものでした。間違いなく人生を変える旅でした。メタ解析という新たな飛び道具を勉強でき(まだまだ先は長いのだが),それなりに認めてもらうこともでき,海外の一流の雰囲気も味わうことができ,オーストラリアも満喫できました。

そこでちょっとした留学のコツを僕なりにまとめてみました。

 

い. CV作ってメールしよう

英語論文があって,こっちで資金が用意できるのならば,研究室訪問は受け入れてもらえるのではないでしょうか。履歴書作って,勇気を出してメールしてみましょう。

 

ろ.だれも君に興味なんてもってない

相手は世界レベルの研究室。当たり前です。僕たちは挑戦者なんです。興味を引きたいならとにかく議論して,セミナーで発言して,プレゼンするしかありません。僕は隣の研究室のセミナーにも紛れ込んだり,中間発表会で質問したり,実験について行ったり,プレゼンしたりして何とか少し興味を引くことができました(と思っています)。

 

は. 相談するなら資料を準備しよう

小泉研にはコーヒータイムという素晴らしい文化があって,そこで気軽に小泉さんを捕まえて色々と相談ができますが,恐らく震一さんはあまりに忙しすぎるのでしょう。そのような時間はありませんでした。ですので僕は毎回 WordかPowerpointで資料を作ってミーティングに臨んでいました。時間は効率よく使わねばなりません。この資料準備のおかげで,疑問点がはっきりしますし,的確なアドバイスが短時間のうちにもらえるようになります。

たとえばこんな

たとえばこんな

 

に. せっかくの外国を楽しもう

UNSWの学生は休日ほぼ学校には来ません。僕たちも休日を楽しみましょう。僕は毎週,海やブッシュウォークに出かけていました。おかげで僕は真っ黒です。飛行機に乗って遠出したりもしました。平日に頑張ればよいのです!

世界遺産ブルーマウンテンズ。すごいのひとことです。シドニーから日帰り出来ちゃいます。

世界遺産ブルーマウンテンズ。すごいのひとことです。シドニーから日帰り出来ちゃいます。

ほ. 英語はそこそこに

帰国子女や英語オタクでもない限り,グループの雑談に完璧についていくのは不可能です。あきらめましょう。僕は研究の議論には困らない程度の英語力はありますが,パブでの雑談には一切ついていけませんでした。あくまで僕たちにとって英語は道具。へらへら笑ってあきらめましょう。自分を責めたらつらくなるだけです。

なんと学内にもパブがある

なんと学内にもパブがある

へ. 自炊しよう

アジアや南欧諸国でもない限り,僕達は日常的な外食には耐えられないと思います。生活費節約や日々の幸せのためにも,自炊を強くお勧めします。ありがとう恵迪寮。

 

と. 日本人を見つけたら仲良くしよう(選択性)

UNSWの研究環境に感服し,オーストラリアの大自然に圧倒され,シドニーの街を愛しつつも,僕はいつも日本を恋しく思っていました。もともと聴かなかったJPOPを聴くようになったのはこのせいです。そんなとき日本人の友達がいればどれだけ心強いことでしょう。わざとゲストハウス等に泊まるのも良い手段かもしれません。

 

 

とにかく,UNSWに行けて,そして日本に帰ってこれて僕は幸せです。支援して下さった北大とUNSWの皆様には感謝しかありません。
なお,帰国後速攻でお寿司を食べに行きました。やっぱり日本のご飯はすばらしい。世界一!

渥美圭佑