はじめまして。研究対象紹介~貝形虫~

はじめまして、今年度から小泉研に加わりましたM1の今野です。

なんだかんだでもう6月の中旬です。でもコロナの影響でまだ全然フィールドに行けておりません(泣)

北海道の大自然と生き物たちが俺を呼んでいるというのに。。。まあ仕方ないですね。。別のことをして楽しみましょう。僕は今、ひたすらハサミムシのお世話をしています。

というわけで、とりわけ書くこともないのですが、ただブログを書いてみたかったので初めてポストしてみます。

とりあえず今回は自分の学部時代の研究対象の生き物について簡単に紹介します。

突然ですが皆さんは貝形虫という分類群を知っているでしょうか?僕は研究者以外でこの分類群を聞いたことがある人に会ったことがありません。そのくらいマイナーな分類群です。僕は学部時代、この“貝形虫(Ostracoda)”という分類群を研究していました。

貝形虫間隙性写真

間隙性貝形虫Pussella属の一種のSEM写真

 

 

貝形虫とは読んで字のごとく“貝”の“形”をした“虫”です。まあ虫といっても昆虫ではなくて甲殻類なのですが。二枚貝のように殻(背甲)を二つもち、その中に体が収まっているとってもかわいらしい生き物です。

貝形虫を知っている人でも動いてるところを見たことがある人は少ないです。でもこれがとってもキュートな動き方をするんですね。一目見れば誰でも推せます。その容姿もあいまって一生懸命に動いてる姿はたまらない。。。貝形虫は知る人ぞ知るとってもキュートな生き物なんです。動いてるところを見たい方はこちら

貝形虫は水のあるところならどこにでもいます。本当にどこにでもいます。海、川、湖、池、はもちろんのコト、その辺の水たまりから金魚鉢の中、家のお風呂まで、、、お風呂はさすがに冗談ですが(笑)、金魚鉢の中にはたくさんいたりします。よくアクアリウムを趣味でやっている人のブログを覗いたりすると「謎の生き物大量発生!」なんてタイトルをつけられて紹介されています。その界隈だと“貝ミジンコ”という俗称で呼ばれてたりします。これは聞いたことあるかもですね。

有名なものだと、ウミホタルという名を聞いたことのある方は多いと思います。いいえ、東京湾アクアライン途中にあるパーキングエリアの愛称ではありません(学部時代に千葉県木更津で調査をしていた時に毎回寄っていましたが)。冗談はさておき、夏の湘南、夜、海が青白く光る現象をニュースやテレビ番組などで見たことがあると思います。その光の正体こそが発光する貝形虫、ウミホタルです。ウミホタルは貝形虫の中でもかなり大きいほうで3㎜ほどもあります。貝形虫の研究者からすれば3㎜は巨大です。ほとんどの貝形虫は1㎜以下でかなり体サイズの小さな分類群です。

ウミホタルについて触れましたがウミホタルを研究していたわけではありません!ここまで完全にウミホタルを研究してる流れだったのですが、ただ認知度が高そうだったので紹介しただけです。

 

さてさて、では学部時代の研究に関することを少しだけお話しさせてもらいます。

僕のテーマは2つあってざっくりいうと、“間隙性貝形虫の分類”と“寄生性貝形虫の分布と生態”です。それぞれで卒論を書きました。

貝形虫すみかいろいろ

貝形虫はいろんな環境に適応しています

 

まず一つ目ですが、「間隙性ってなんじゃらほい」と思っていた方へ、間隙環境とそこに住む生き物“間隙性生物”について説明しましょう。夏のビーチを想像してみてください。真夏の焼けるような日差し、さわやかな風、波のせせらぎ、水着美女、そしてサラサラの砂。本来であれば水着美女に注目したいのですがここでは我慢して砂に注目しましょう。砂は粒子の大きさにもよりますが完全にツメツメで堆積しているわけではなく隙間があって、その隙間は水で満たされています。その隙間は“間隙環境”と呼ばれ、そこを生活の場とする生物は“間隙性生物”と呼ばれます。

間隙環境の種多様性は非常に高く、また、研究も盛んには行われていないため本当に未記載種の宝庫です。ビーチの砂でもちょこっとすくって顕微鏡で観察すると、まさに名前のついてない生き物のオンパレード。貝形虫類も多く生息しています。

僕はその中のとある属に注目し分類をやっていました。記載的な研究です。現在は中断中ですが、記載の仕事もやらなきゃなあと思っているので、記載論文が発表できたらまた詳しく書きたいと思います。今年中には書き上げたい!!!(去年も言ってた気がするのは内緒)

 

二つ目は、ザリガニに寄生する貝形虫の研究です。ザリガニの寄生虫としてはヒルミミズの仲間が有名ですが、実は貝形虫もザリガニに寄生しちゃってます。

ザリガニ寄生性貝形虫はその多くが北米から中南米にかけて生息しています。ちょうどザリガニの種多様性が高いエリアに多くの寄生性貝形虫も生息しているわけです。そりゃそうか。

寄生性種脚

寄生性貝形虫の歩脚。ほかの貝形虫ではこんな熊手状にはなっていません。とんでもない選択を感じます。

 

実は日本でもこの寄生性貝形虫は発見されているのですが、わが国が誇る在来種二ホンザリガニにくっついているわけではなく、外来種であるシグナルザリガニ(ウチダザリガニ)とアメリカザリガニから発見されています。これらからそれぞれ別の種が発見されており、移入されたときに一緒に入ってきてともに定着したものだろうと考えられています。

実はこのザリガニ貝形虫のテーマ4年生の10月ぐらいから突如として始まりました。きっかけは論文紹介の準備でヨーロッパのザリガニに関する論文を当時の指導教員と一緒に読んでいた時でした。

教「そういえばザリガニにも貝形虫つくんだよねえ」

僕「貝形虫って寄生性の種類もいるんですか!?」

教「うん。炭酸水で洗うと落ちるらしい」

僕「え、炭酸水!?研究しながらザリガニつまみに焼酎ソーダ割で一杯いけるじゃないですか!!!」

・・・こうしてサブワークとしてザリガニ貝形虫の研究が始まりました。。。(笑)

この研究は現在進行形なので形になり次第また報告させてもらおうかと思います。(いつになることやら)

ザリ大量

大量にとったザリガニ。深夜3時に大学近くの池で採ってました。夕方からこの時間にかけて罠をかけておくとどっさり取れます

 

研究室の仲間たちと一緒に(半分拉致して)いろんな場所でザリガニを採って、夜の実験室でザリガニにウィルキンソンをぶっかけて(孤独)、測定して(虚無)、貝形虫の個体数数えて(一番しんどい)、解剖して(一周回って楽しい)、メインのほうの研究もして(むしろサブ)、、、とっても楽しい学部時代だったなあ。。。(笑)

ここまで学部時代にお世話になった生き物”貝形虫”について紹介しました。謎が多くてとても面白い分類群だと思います。貝形虫についてもっと知りたい!という方はこちらをご参照ください。寡黙なイギリス人貝形虫研究者、琵琶湖博物館のSmithさんが運営しているサイトです。貝形虫に関する包括的で超エキサイティングな内容が書かれています。

修士の二年間ではこれ以上に充実した研究生活を送りたいと思っています!やることはたくさんあるので、あとはそれについてしっかり考えて(ここが難しい)、こなせるかどうかです。頑張ります!!!

初投稿の割に長くなってしまいましたが、皆様お付き合いありがとうございました。

 

今野