2006.8台湾研修旅行
2006年8月21日から26日まで,台中東海大学(台湾最大の私立大学)および国立台湾大学(台湾最大の大学)を訪問する機会を得て,我々北海道大学のメンバーとの間で若手研究者の学術文化交流を行った。札幌から台北までの飛行時間は約4時間(時差1時間),台北から台中までは高速バスあるいは列車で約2時間半であった。
初日は台中東海大学生命科学系林良恭副教授の研究室を訪問した。林博士はほ乳類生態学,特に台湾におけるコウモリとネズミの生態に関する研究の第一人者であり,地域開発に伴う生態系への影響について成果が紹介された。台中東海大学の新1年生は全寮制となっており大学構内の早朝清掃が必須科目になっている点は興味深く,ほとんどの大学院生は奨学金を得ていることや教員が在学生のみならず卒業生のアフタケアを積極的に行っている点など今後の日本の大学教育を考える上で参考になった。
翌日は台中から車で2時間ほどの郊外にある台湾の生物多様性を紹介する博物館(保全教育館)を訪問した。台湾は亜熱帯にありながら,新高山(玉山)をはじめとした3,000メートルを越える高山帯を有する独特の立地条件にあるおかげで豊富な生物種を保有していることを学んだ。特に,ガジュマルと呼ばれるクワ科の大樹は亜熱帯および熱帯の固有種であり,うねるような太い幹や枝から垂れる無数の気根は圧巻であった。
台中での二日間の日程を終了したあと台北に列車で移動し,翌日,国立台湾大学の海洋研究所教授謝文陽博士の研究室を訪問した。台湾大学は台北市内に広大な敷地を有する文字通り国内最大の大学である。謝教授は東京大学海洋科学研究所で博士学位を取得しており,20年来使っていないとは思えないほど流暢な日本語で対応してくれた。ここでもお互いの研究成果について活発な意見交換を行った。謝教授の専門は新規海洋微生物の探索であり,環境科学の視点からも興味深い微生物の説明を受けた。北海道大学側からは油田や熱水噴出口などさまざまな極限環境に分布する微生物に関する研究成果を報告した。謝教授とは事前に電子メールで2,3度やりとりしただけにも関わらず,研究室内で昼食(飲茶)パーティを準備して我々を大歓迎してくれた。お陰で学生同士の文化交流も格段に深めることができた。主として英語での会話であったが,漢字を使った筆談も有効な手段であった。台湾の男子学生には大学卒業後に1年間の兵役義務があることを知り,日本の学生の恵まれた環境を認識した。最終日は台北市内を観光した。中正記念堂においては蒋介石氏の銅像を拝観した。その前には「直立しておじぎをしてください」という注意書きがありその功績を称えようとする台湾政府の姿勢が伺えた。その一方で,蒋介石に対する地元の評価は両極端であった。また,台北市内の龍山寺では平日にも関わらず多くの人が熱心に線香を上げ参拝する姿を見て熱心な仏教国であることを知ることができた。中国が台湾から取り戻したいと願っている貴重な石器,陶器,磁器などを集めた胡宮博物館もすばらしかった。
最後になりましたが渡航費の援助および渡航に係るさまざまな手続きをして頂いた公益財団法人交流協会に心よりお礼申し上げます。今回,教員だけではなく学生も含めて両国間の交流を深めることができたことは大変有意義であり,多くのことを学ぶことができました。今後,本事業が益々発展することを祈っています。