Pizzaの論文が国内外のメディアで紹介されました!

PDで当研究室に来ていたPizzaの論文がProceedings of Royal Society B に掲載されました。
(随分昔のことになっちゃいましたが。。。^^;)

Chow PKA, Uchida K, von Bayern A and Koizumi I (2021) Characteristics of urban environments and novel problem-solving performance in Eurasian red squirrels. Proceedings of the Royal Society B, 288, 20202832

Pizzaは認知科学の研究をしていて、これまでリスの学習や記憶、新規課題解決能力について調べていました。こういった抽象的な能力をどのように定量化するかが腕の見せ所で、彼女はPhD studentの頃に数多くの実験機器を作ってユニークな研究を行ってきました。フィールド調査のスキル・体力・精神力もめちゃくちゃスゴくて、毎日2-3時に起きて観察に行き、多くのリスを外見から個体識別していました(ビデオも記録してあるので識別率もほぼ完璧)。夜明け前から昼くらいまでフィールド調査をして(初夏の道東の夜明けは朝3時頃。。。)、午後はデータ入力、解析や論文書き。就寝も22時以降とか信じられないショートスリーパー&ハードワーカーでした。これを普通に半年ほど毎日続けるので本当に恐れ入りました。。。(^^;)

リスとパズル

エゾリスと新規課題解決能力を調べるパズル(Pizza撮影)。レバーを押したり引いたりすると餌が取れる仕組みになっている。全ての個体が餌を取れるほど簡単過ぎても差が検出できないし、難し過ぎてもダメ。ちょうど良い程度の難しさのパズルを作成して、成功率や学習能力、記憶力などを調べる。

当研究室ではうっちーが研究していた帯広の都市と郊外の系でエゾリスの認知能力を比較するという内容でJSPSの外国人特別研究員に採択されていました。研究計画を立てる時点で幾つかの鳥類において都市化によって認知能力が高まっているという研究がありました。これは都市という新しい環境では柔軟な行動や新規課題解決能力が有利になるから、という議論でした。当時まだ実証例が少なく、いろんなバックグラウンドが明らかになってきたエゾリスの系でこの仮説を調べるのは非常にインパクトがあるだろう、と。

・・・が、いざ調査を初めると予定していた郊外の主要調査地で大規模な森林伐採があったりして、郊外でのサンプリングが困難になりました。でも、そこはさすがPizza、プランBとして様々な都市公園でエゾリスの認知能力を比較して、都市のどんな個別要因が新規問題解決能力や学習能力に関係しているのかを明らかにしました。研究の詳細はこちらのプレスリリースをご覧ください。

本論文は国内外の複数メディアに取り上げて頂きましたが、Treehuggerという自然・環境系のサイトではPizzaとうっちーと私と編集者の4名でZoomミーティングを行いました。論文も事前に読んでくれており、かなり専門的な議論をして質の高い記事を書いてくれました。

ちなみに、最初の原稿では新規課題と学習だけでなく、記憶や一般化能力など他のデータも入れて論文を書いていました。ただ、分量が膨大になってフォーカスが難しかったので2つに分けました。個人的には記憶や汎化の方が面白いと思っていたので、このパートのみでProceedings Bに採択されるとは思っていませんでした。Editorも3人のreviewerもビックリするくらい協力的で、冷酷が常のトップジャーナルでこんなこともあるんだな〜、と新鮮な経験でした。うっちーの論文も概ねそうでしたが、リス業界はフレンドリーな人が多い印象です。次作も楽しみです!

 

以下、論文を取り上げてくれたサイトの一部を紹介

産経新聞:【びっくりサイエンス】都会のリスは結構、人間嫌い
Science Japan (JST news): Squirrels’ correct answer rate negatively affected by presence of crowds Hokkaido University study suggests urban environment may cause stress
Treehugger: How People Make Some Squirrels Better Problem Solvers
Journal of Experimental Biology誌による紹介:City characteristics hinder squirrels’ puzzle skills