最初は痛み止めが効いていたので、薬を飲んだ後にご飯を食べていたのですが、途中から痛み止めも効かなくなって。。。眠れない、食べられない、で地獄のようでした(最後は食欲もなくなってしまいましたが)。これが3-4日続いて体重も3kgほど減っていました。
お医者さんに見てもらっても「こりゃ、ヒドい」ってビックリされました。あれだけ腫れたら1ヶ月くらい声が出なくても不思議じゃないとも。。。強力な薬と痛み止めを貰って何とか良くなりましたが、こんな苦しい1週間を過ごしたのは久々でした。
ただ、不幸中の幸い?だったのが、右だけが異常肥大したこと。両方が同じ位腫れたら喉が完全に塞がっていました。あと、咳や鼻づまりがなかったこと。これらに同時に罹っていたら痛くて、息ができなくて耐えられなかったことでしょう。こうなってたら自ら入院志願していたと思います。
さて苦しい話はこれくらいにして、そもそも扁桃腺ってどんな役割があるのでしょう?
扁桃腺は体内へ侵入する病原体(ウイルス、細菌)をやっつける免疫の役割があるそうです。ただし、これは免疫力が弱い子供の頃に重要であって、大人になるとお役御免になるそうです。
というわけで、大人になっても扁桃炎にかかり易い人は、いっそのこと扁桃腺を除去してしまうそうです。身体にとってあってもなくても良い器官なので除去してしまう、って何だか盲腸(虫垂)に似ていますね。
そこで私も「扁桃腺とってしまえば?」と言われるのですが、生物の研究をしている者としては「身体に不必要な器官などない」と思ってしまうわけです。あってもなくても良い器官は「痕跡器官(昔必要だったけど今は使わない)」などと言われますが、これまで痕跡器官だと考えられていたものが実はとても重要だった、と後になって分かってくることが多々あります。
虫垂(盲腸)なんてその最たるものですよね。昔は不必要だと思われていたけど、最近は免疫にとって非常に重要な役割を担ってるんじゃないかとの見方が強くなっています。
『わたしたちの体は寄生虫を欲している』に詳しく書いてありました(この本スゴく面白かったです!)。
以下のような大阪大学の最近の研究のもあります。
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20140410/
ヒトではないですが、私の研究対象であるサケ科魚類のトレードマーク、アブラビレ。背びれの後ろについている鰭条のない小さなヒレです。みんなその存在を不思議に思っていました。ある研究ではアブラビレが大きいオスは優しくてモテるというウソみたいな報告をしていましたが(ただ、方法はきちんとしていたし、結果もかなりキレイだった。Petersson et al. 1999 Anim Behav)、多くの研究者は、祖先の名残、つまり痕跡器官との見方が強かったと思います。これに対して、2004年にアブラビレが遊泳に寄与しているという仮説が提唱されました(Reimchen and Temple 2004, Can J Zool; Temple and Reimchen 2008, Can J Zool)。そして、2012-2014年に立て続けに、それをサポートする研究がProceedings of Royal Societyという一流の雑誌に掲載されました(Buckland-Nicks et al. 2012 PRSB; Stewart and Hale 2013 PRSB; Stewart et al. 2014 PRSB)。あんなに小さくて意味のなさそうなヒレも、やっぱり自然界で生きていく上では何かの役割があるんだな、と改めて思い知らされました。
このような生物の無駄のなさを知れば知るほど、自分の体に不必要なものなどない、と思ってしまいます。特に、小さい頃は大きな役割があった扁桃腺に、その役割が”なくなる”なんてことは考えづらいですよねー。というわけで、扁桃腺をとってしまおうとは全く考えていません。
ただ、もしこの地獄の苦しみが癖になってしまうのであれば、マイナス面があっても取ってしまいたくなるかもしれません。。。
そうならないように日頃から健康に気をつけないといけないですね。もう若くないのだから。。。
I.K.