Jason(D2)の2本目の論文がアクセプトされました!(1本目はこちら)
彼の修士論文の一部です。
Anders J, Nakao M, Uchida K, Ayer CG, Asakawa M and Koizumi I (2019) Comparison of the intestinal helminth community of the large Japanese field mouse (Apodemus speciosus) between urban, rural, and natural sites in Hokkaido, Japan. Parasitology International, 70, 51-57
哺乳類の寄生虫はわれわれ人間にも感染することがあるため(人獣共通感染症)その動態を知ることは大事です。しかし寄生虫は分類が難しいため(そして多くの研究者も敬遠するため)なかなか研究が進んでいません。特に都市化にともなって寄生虫相がどのように変化するかはほとんど分かっていません。そこで今回は北海道で普通に見られるアカネズミの腸内寄生虫相(線虫、条虫、吸虫など)を都市、郊外、森林で比較しました。予想通り本来の環境に近い森林と比較して都市部で寄生虫相が大きく変化していました。ただ、地点ごとのバラツキも大きく、寄生虫タイプごとでの明瞭なパターンは見つかりませんでした。都市化にともなう寄生虫相の変化を予測するためには、もっと多くの地点や異なる種でデータをとり、詳細な環境要因も含めて分析する必要がありそうです。今回はあまり多くのことはいえず基礎的なデータを提示したに留まっていますが、今後のJasonの研究の重要なステップになるはずです(実は幸運なことにJSPS特別研究員DC2に採択されました!)。
ちなみに今回の論文は投稿してから結構時間がかかりました。レフリーの1人が「このデータはおかしいんじゃないか?似たような寄生虫を間違えて記載しているのでは?」と繰り返し聞いてきて、最後は「専門家の◯◯さんに聞くべきだ!」と主張されました。忙しい先生なのではじめは躊躇していましたが、寄生虫の中でも特別な分類群が分かる先生がいないのでお願いすると心良く引き受けてくださいました。そしてなんと。。。レフリーの言っていたことが正しく、われわれの種同定が間違えていたのです。。。新たに同定し直したデータで解析すると以前よりも明瞭な傾向が得られました。これでディスカッションも書きやすくなり、かなりスッキリしました。本当にレフリー様々です。もちろん後からお願いした先生には共著者に加わって頂きました。ちょっと時間かかりましたがほんと良かったです。寄生虫の研究は恐ろしい。。。(^^;)