植物共生微生物 Rhizobacteria
根圏微生物についての研究内容
根圏とは「植物の根から影響を受ける領域」のことです。 この領域では、植物から微生物の生育に必要な栄養源や酸素が供給されます。
そのため、その他の領域に比べて微生物の数が多く、その活性も高いことが知られています(図1)。
また、根圏微生物が植物の成長を促進することも知られています。私たちは世界で初めてウキクサの成長を2倍も促進する細菌を北大植物園から発見しました。[91.解17]
図1.蛍光顕微鏡観察の様子
根の表面に根圏微生物がバイオフィルムを形成している様子を観察することができます。
根圏浄化(リゾレメディエーション)
私たちは植物による微生物の活性化に着目し、 植物と環境汚染物質分解能を有する根圏微生物を利用した環境汚染浄化技術(リゾレメディエーション)に関する研究を行っています。
環境汚染物質分解細菌を単独で汚染現場に導入しても、期待された分解活性を発揮できなくなることが知られています。 これは、現場での生存競争と環境ストレスのために導入した微生物が定着しないことや細胞活性の低下が原因と考えられます。
しかし、植物との共生作用を利用することでこれらの問題を解決できる可能性があります。
いま私たちは、産総研、山梨大学、大阪大学、北里大学とチームを組んで水生植物と根圏細菌群を最適デザイン化する新技術を開発しています。(JST-ALCA: http://www.jst.go.jp/alca/kadai.html#b23_12)(図1、2、3)
図1.光エネルギーを利用した持続的な環境浄化
植物が作り出す光合成産物や二次代謝産物は根圏に放出されています。そのため多くの微生物が根圏に集まっています。 その中には、汚染物質の分解能を持つものも存在しています。このような根圏微生物と植物を利用することで、持続的かつ効率の良い 環境浄化を行うことができると期待されます。 これは、光環境浄化技術と言えるかもしれません。
図2.P23との共生によるフェノールの分解
P23はアオウキクサの根圏から単離されたフェノール分解微生物です。アオウキクサに強く付着する能力もあります。
P23単独(△)では分解活性が低く、持続性もありません。
しかし、P23をアオウキクサに付着させた状態(○)でフェノールの分解を行うと、高い分解活性を示しました。
さらに160時間以上にわたって持続的な分解が可能でした。
植物の成長促進
根圏微生物の中には植物の成長を促進する能力を持つものがいます。このような微生物はPGPR (Plant Growth Promoting Rhizobacterium) と呼ばれています。
PGPRの効果としては植物成長ホルモンの分泌、リンや鉄の可溶化、窒素化合物の可溶化および固定などによる植物の成長促進、 あるいは抗生物質等を分泌することで植物を病原微生物から防御することなどが知られています。
このように植物と根圏微生物は互いに有益な共生関係を築いています。 私たちが単離した汚染物質分解細菌のなかにもアオウキクサの成長を促進するPGPRを発見することができました。 [91.解17].
根圏細菌による植物の成長促進
P23はアオウキクサの成長を促進するPGPRであることもわかっています。
P23が付着したアオウキクサは一週間で4倍近くに成長しました。
これは無菌のウキクサと比較すると約2倍の成長量です。
根圏活用型高次植生バイオプロセス(ALCAバイオテクノロジー 2011-2016)
共生微生物を活用した水生バイオマスの効率生産 (ALCA実用技術化ステージ 2016-2020)
タイ国・生物循環グリーン経済実現に向けたウキクサホロビオント資源価値の
包括的開拓 (SATREPS 2020-)
https://www.jst.go.jp/global/kadai/r0204_thailand.html
https://www.jst.go.jp/global/public/shiryo/satreps_brochure_j_web.pdf?202202