覚悟していましたし、納得もしていましたけど、やっぱり教員になるとフィールドに行ける時間は少なくなってしまいます。野外での発見や自然をみるセンスが重要な生態学では、フィールドでの感覚を忘れるのが怖いところです。今回は、近場でもその気になればいろいろ観察できるんだな〜、と改めて感じたお話です。
週末はよく娘と公園に遊びにいきます。この日は誕生日プレゼントに買ってあげたサッカーボールを持って出かけました。2−3日前の雨風で木の実などが落ちてると、もうサッカーどころではないですね。うちの娘はひたすら木の実を拾い続けます(笑)保育園でもお散歩ついでに葉っぱや木の実を拾ってお土産に持って帰ってきてくれるのですが(処理に少し困っていますが。。。^^;)、うちの子は拾うのが相当好きみたいです。一緒に拾ってても細かいところに目がいくようで見つけるの上手だな〜と思います。ヒトの進化の過程では、男性が狩りに出かけて女性は近くで木の実や山菜などを拾っていた時代が長く続いたようです。なかなか優れた♀の資質があるな、と研究バカ/親バカの私は考えたりします。
この日も大量のスズカケの実(いわゆるプラタナスの実)とヤナギの実を拾っていました。
見ているだけなのも暇なので一緒に探していたらちょっと変わったアリを見つけました。
見た目も動き方も何か変だな〜、と、手の上で転がしていると。。。
何と尻から糸を出したではないか!
クモだ!
すっげぇ〜!!!
皆さんご存知の通り(?)クモは昆虫ではないので、アリより脚が多い8本。しかし、一番前の2脚を持ち上げてアリの触覚のように見せています。しかも、クモは胴体部分が2つしかないけど、そのうちのひとつに窪みを作って、あたかも3つあるかのようにしてアリに似せている。
名前はそのまま「アリグモ」と言うようで熱帯域を中心に現在80種ほど見つかっているようです(東南アジアにはまだまだ未記載の新種がいっぱいいるだろう、とのこと)。北海道のこんな街中の公園にもいるんだねー。オスは大アゴがスゴくてもっとカッコいいらしい。オスもこの公園にいるんだろうか?どうやって集団を維持してるんだろう?そもそもアリに擬態する意味さえまだよく分かっていないらしいです。面白いな〜
と一人感動していたのですが、娘は木の実拾いの方が楽しいようです。あまり興味を示してくれません。男は動くものが好きで、女は動かないものの方が好き?やっぱり小さい頃から性差ってあるのかな〜
と娘の木の実拾いを見ていると、「あれっ?」ヤナギってこんな時期にこんな実をつけたっけ???
これもすぐ気付くべきだったのですが、そう、虫こぶ(虫えい)でした。実や種ではないですね。
中に何が入ってるのかな〜?とドキドキしながら開けてみると(気持ち悪い虫がいっぱい入ってたらヤダな〜)、かわいい?イモムシが一匹だけ入っていました。
これはシダレヤナギに産卵するコブハバチ(虫こぶを作る小さなハチ)の仲間のようでした。変形した葉っぱを食べて育つんですね。中には黒いフンもいっぱい見えます。開けてしまって、こいつら大丈夫かな〜、と少し心配しつつその場に置いてきました。でも、実際、落葉すると自分で穴をあけて脱出して地面に潜って越冬するそうです。ただ、固められた公園の地面で大丈夫なんだろうか?何百何千と幼虫がいるはずだけど全滅してしまわないんだろうか。。。とまたいろいろと考えてしまいます。
いずれにせよ、う〜ん、やっぱり昆虫はスゴイな〜、と感心してしまいました。自分達の想像を超えるような生き方をいとも簡単にやってのけているように見えます。
以前、アリの研究をしていた教授に「自分は、昆虫は自分達とかけ離れ過ぎてて理解できないので研究したいとは思わない」と言ったら「バカだな〜。想像できないから面白いんじゃないか。理解できることを研究しても何も面白くない」と言われました。なるほど、そういう考え方もあるよなー、と思いましたが、これからも益々その言葉を思い出すことが多くなるんだろうな〜
さて、長くなりましたが、最後の難関。
この大量に集めたスズカケの実とコブハバチの虫えい。「持って帰る〜」という娘をどうやって諦めさせるか。。。ドングリや葉っぱならいいけど、さすがに数百匹のイモムシは。。。
幸い、雨が降り出して遠くで雷がなってくれたので、「逃げろ〜!!!」とうやむやにして抱きかかえてダッシュでお家に帰りました 笑
たとえ山の奥に行けなかったとしても、身近な自然の中にも面白いことを発見できるようにしなきゃですね!
小泉