明けましておめでとうございます!乃美です。
自分のフィールド時期にほとんど調査ネタをアップしてなかったのでこれを期にどんどん出していこうかと思います。
苫小牧研究林を調査地として2008年の秋に巣箱を300個設置し、巣箱を利用する鳥類の繁殖生態を調べています。
研究テーマとしては主に婚外交尾や性比調節といった行動生態学の分野を中心に行ってきました。僕も先日ようやく論文がアクセプトされました。苫小牧研究林のスタッフをはじめ研究に協力していただいたすべての方々に感謝したいと思います。
さて調査地ではシジュウカラ科4種(シジュウカラ、ヤマガラ、ヒガラ、ハシブトガラ)とゴジュウカラが繁殖に巣箱を利用します。
今回は営巣数の多いシジュウカラを使って繁殖サイクルを紹介します。
本州では3月後半~4月上旬に繁殖が繁殖が始まりますが、北海道では遅く5月上旬からになります。調査もこの時期から行っています。
カラ類の営巣はコケを敷き詰めることから始まります。
コケを敷き詰めたあとはシカの毛などの獣毛を使って卵を産むための産座を作ります。
巣を作るのはすべて雌の仕事。雌が巣材を集める間、雄は集めることはせずひたすら雌に付き添います。メイトガードといって他の雄が雌に近づかないようにするための行動です。
巣作りは長くて2週間、シーズンも後半になると時間がないため1日で完成させてしまうこともあります。
ある程度巣材がそろったところで産卵が始まります。1日に1個ずつ産んでいきます。
産卵開始日は重要なデータですが、300個の巣箱を毎日チェックすることは物理的に不可能です。実際の見回りは週一ペースです。1日1個ずつという性質を利用して卵数から初卵日を逆算して特定します。
産みながらもちょっとずつ獣毛を追加していきます。
卵数は平均で10個。産み終わった頃にもう一度巣を訪れて卵数を確認します。
卵をすべて産み終わると抱卵が始まります。
このすべて産み終わってからというのがポイントで雛が孵化するタイミングを一斉にするためです。
抱卵もすべて雌の仕事。雄は餌をとる時間のない雌のために時折餌を運んできます。
2週間ほどで雛が孵化します。孵化日はこの時期に毎日巣を訪れて特定します。
カモなど生まれてすぐ活動できる鳥と比べると様子が全く違いますね。ただこちらのタイプの方がより進化したグループとされています。
給餌は雌雄で行います。雛が小さいうちは羽が生えてないので雌が雛を温め、雄が中心に給餌を行います。
孵化後1週間ほど経過した雛。翼も見え始めてますが、まだ目も開いていません。
この時期に親を捕獲して計測や足輪の装着、採血などを行っています。
捕獲方法は親鳥が給餌のために巣箱に入ったところを捕まえるというシンプルなやりかたです。もちろん許可を得て行っています。
孵化後13日目。この時期になるとようやく雛らしくなってきます。
雛の捕獲も13日目に行います。これもポイントで、14日目以降になると飛べるくらいまで翼が伸びてしまうので慎重に扱わないと逃げられる危険性が高くなるからです。
それよりも前だと、1時間ほど拘束するので計測中に弱らないか不安になります。
17日目。この時期になるともう完全に飛べる状態なので、刺激しないようにそっとフタを開けて巣立ったかどうかをチェックします。
巣箱内での餌やりの様子も観察してみました。
特殊な方法で観察しているのでやり方は内緒です(笑)。
孵化から巣立ちまでの期間は平均で17日です。
考えてみればものすごい成長スピードです。
ただこれでも開放巣タイプの種と比べれば遅い方です。樹洞営巣の方が安全であるため、巣立ちまでの日数を長くとれるのです。
次回は他の種についても紹介していきます。