久々のアクセプト報告です!
今年3月に卒業した乃美君の博士論文の一章がアクセプトされました!
Nomi D, Yuta T and Koizumi I (2018) Male feeding contribution facilitates multiple breeding in a bi-parental passerine. IBIS, 160, 293-300
これは乃美君の渾身の1本です。研究計画からフィールド調査、データ解析から論文執筆まで彼がほぼ独力で行ない、見事、鳥類学の最高峰IBIS誌に受理されました。
1シーズン内に複数回繁殖する個体と1回しか繁殖しない個体が共存(Facultative multiple breeding)する理由は何か?単純に考えると出来るだけ多く繁殖した方が多くの子供が残せそうですが、みんながそうするわけではありません。鳥類に限らず、これまで数多くの研究が行われてきましたが、本研究では初めてオス親の役割に着目しました。種明かしをすると「オス親が重要なのは当然でしょ」と思われそうですが、実際に卵を産むのはメスなので、これまでメスの年齢やコンディションを中心に複数回繁殖が調べられてきました。今回の「オス親も考慮すべき」との提唱は、今後の複数回繁殖の研究において重要になるでしょう。さらに、ペア産卵におけるオス親の役割を知ることは、一夫一妻の繁殖様式(実は自然界では希!)の理解にも繋がります。
ちなみに、博士論文のもう1章はAUK(これも鳥類学トップのひとつ)に投稿し、良いところまでいきましたが最後の最後でダメでした。いろんな分類群(生物)を扱っているといろんなジャーナルに投稿することになるのですが、最近思うのは鳥類学は厳しいな、と。特に、ヨーロッパを中心にレベルの高い研究が行われているカラ類でのフィールド研究はなおさら。。。(向こうはチーム体制で何十年という莫大なデータを集めています)
以前に日本の鳥類学者に言われたのですが、「海外の鳥類学者は特にプライドがあるから厳しいよ」、と。鳥類学は動物学の中でも最も歴史と伝統があります(例えば、IBISの創立は1859年!)。その言葉通り「えっ?これがリジェクト?!」というのを多々経験してきました。
そんな中、D2の時の研究をしっかりとIBISに通した乃美はほんと大したもんだと。
おめでとう!
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