立木君との快挙に続いて、統計数理研究所の島谷さんとの共同研究がBehavioral Ecology誌にアクセプトされました。これまで幾つかの霊長類や鳥類においてメスが周りの個体に合わせて繁殖を同調させることが知られていましたが、今回初めて魚類においても同様の現象を報告しました。こちらも詳しい内容は出版後に。
Koizumi I. and Shimatani IK (2016) Socially induced reproductive synchrony in a salmonid: an approximate Bayesian computation approach. Behavioural Ecology, 27, 1386-1396
行動生態学が専門です、というのであれば出しておきたいJournalですね。行動系の雑誌の中で一番好きです。
立木君との研究は純粋な数理モデルでしたが、今回は統計モデルです。つまり、野外でとった実データに数理モデルを当てはめ、現象の理解を試みます。今回は集団遺伝学で注目されているABC (Approximate Bayesian Computation)という方法を初めて行動生態学に持ち込みました。ABCは非常に柔軟で強力なモデリング手法なので、今後、行動生態学でも一般的になってくると思われます。そうしたら我々の研究は先駆的なものとして崇め奉られるはず!!!
今回の研究もモデリングとフィールドが非常にバランスよくミックスしていると思います。例えば、Discussionの前半は「行動生態学におけるABCの有用性」、後半は「魚類における繁殖同調」と両方の新規性を余すことなく伝えられました。いろんな生物に応用できる一般性と、生き物好きが喜ぶ面白い現象を同時に伝えられるのは嬉しい限りです。
この論文も形になるまでにひじょ〜〜〜〜うに勉強させてもらいました。知る人ぞ知る島谷さんは超個性的な人なんですが、そういう人ほどめちゃくちゃ面白い!統計屋さんはいろんな分野を渡り歩いているだけに視野の広さは半端じゃないです。今回も本研究に関することだけでなく、そもそもモデリングとは何か、サイエンスとは何か、といった根本的な考え方をいっぱい教えてくれました(といっても一般的な話ではなく、あくまで島谷さんの価値観の中での、というのがより面白かった)。量子力学における確率論の役割などは非常に興味深かったです。
論文に関しては初稿を書き上げてから島谷さんと15回ほどしっかりとやり取りをしたので(英文校閲が終わった後まで。。。^^;)、正直3名のレフェリーコメントは非常にラクでした。これも自分の中で思い出深い一本になりそうです。
過去2年間は、島谷さん、立木君、とモデル屋さんと共同研究ができて本当に有意義でした。同じ数学を用いていても少しずつ異なるモデリングの世界を同時に体験できたのは幸せなことです。
これからいろんな分野で異分野との共同作業が求められるようになってきます。生態学でも共同で取り組まないと解決できない問題が多くなっていると思います。今回の2つの共同研究は私の今後の方向性にも大きく影響してくるはずです。さらに大きなサイエンスを目指して。今後ともよろしくお願い致します。
小泉
P. S. 本研究ではABCの改良版のAKB (Approximate Kernel Bayesian) という手法を使っています。ちまたで話題のグループが消える前に発表できて良かった?!