山崎研究室 (Yamazaki Lab)

合成生物学 (Synthetic Biology) の研究室です。

研究内容(Research)

研究におけるキーパーフォーマンス:

如何なる遺伝子でも設計することができます。

研究キーワード:人工生物、人工ゲノムデザイン、合成生物学、バイオセンサー、指向的進化加速器、生物デバイス(BioDevice)、BioBrick, iGEM

<Key words: Artificial organisms, Gene design, Synthetic biology, Biosensor, BioDevice, BioBrick, E. coli, Plant, iGEM, Acceleration of directed evolution>

メッセージ:人工遺伝子を生物に導入しておくことにより、生物が元々持っている正常な振る舞いとは異なる、作成者によって意図された自然界に於いては決して有り得ない振る舞いを生物にさせることが可能です。そのような人工遺伝子を我々は、生物デバイスと呼びます。あなたの想像力を生かして、そのような生物デバイスを持った、素晴らしい人工生命体を私たちと一緒に創造してみませんか。北大でお待ちしています。

※ 研究に興味のある受験生は、事前に連絡をいただければ詳細な説明をいたします。下記メールアドレスに、お気軽にお問い合わせください。

最近の研究<Recent Research>

人類は生物の中から何種類かを選び出し改良を加えることにより、農作物や家畜とし、「人類のために生きる生物」を創り出してきました。日本ではまだ、遺伝子組換え作物の利用はあれこれと議論されてはいますが、世界的には組換え作物の生産量は年々増加し続けています。日本でもいずれは、組換え作物に対する消費者の理解の不足から生じた誤解は解け、キメラ遺伝子を何百何千と内包する「人類に都合の良い改造生物」を利用する時代は確実に近付いています。私が研究者としての役割を終えるまでに行いたいことは、「遺伝子デザイン学」の構築です。生物を改造する技術が成熟すれば、ストレス耐性の改造作物が安定した食糧供給を支え、改造植物が劣化した環境を改善してくれることでしょう。下記の「応用研究テーマ」のところでも概説しますが、例えば約10種類の生物から調整したDNA断片を部品として組合せて3つのキメラ遺伝子を作り、ヒトの情報伝達系を植物内で再現する程度の私の実験などは、もはや難しい実験ではありません。今後の10年間は、「複数の情報伝達系・複数の代謝系を、意図したとおりに機能させる技術を完成させ、生物ロボットの安全性・有用性を立証できる研究をして行きたい」と考えています上記研究目的を達成するためのアプローチとして、これまで行ってきた研究を以下に概説することにより、その流れを御理解いただければと思います。

<Human being had been creating desired agricultural products or livestock by their continuous efforts to repeat selection of plants and animals for long time. During last decade, the quantity of production of genetically modified crops has been increasing every year, even though Japanese consumers still play it cozy. However, sooner or later, misunderstanding which arose from shortage of consumers understanding as to genetic recombination of crops would be reduced. And, before long, the technology for genetic modification of crops will be established, these crops should support the food production, and stress tolerant organisms should contribute for remediation of deteriorated environment in near future. As an applied field research, we succeeded in making six plant biosensors that can determine estrogen, progesterone, glucocorticoid, mineralocorticoid, thyroid hormone, and PPARg ligand by introducing three chimeric genes into plants. These genes were synthesized by fusing DNA fragments (genetic parts) obtained from various organisms containing human, bacteria, viruses, and plant in last decade. In next decade we will make various biosensors useful for human being and the evolution accelerator through constructing BioDevices employing model based design method based on the technology of synthetic biology.>

学生の研究テーマ例

これまでの研究成果

TBP(TATA Box 結合タンパク質)に関する基礎研究(分子生物学):

24年前に私が生物の改造に必要と考えた重要な要素の一つは「導入遺伝子の制御を司るプロモーターと転写因子との相互作用がどのようであるかを解明すること」でした。当時、植物由来の転写因子 (TGA1a) と TATA 配列結合タンパク質 (TBP) が、米国ロックフェラー大学のナムハイ=チュア教授の研究室でクローニングされましたので、彼らとの共同研究を開始し、これらの生化学的性質を世界で始めて明らかにしました。さらに、これらの性質をより正確に調べるための植物由来の試験管内転写系を世界で始めて独自に開発し、植物の TBP の TATA 配列の認識が、他の生物由来の TBP とどのように異なるかを詳細に調べました

転写コアクチベーターに関する基礎研究(分子生物学):

このような「初期の基礎研究テーマ」が一段落したところで、私が次に重要だと考えたことは、「情報が転写装置内のタンパク質の中をどのように伝わり、それがマクロな生命現象とどのように関わっているかを解明すること」でした。これは、「現在の基礎研究テーマ」として引き継がれ、1995年以降の13年間、シロイヌナズナの転写コアクチベーター(MBF1)の研究に取り組むことになりました。研究開始から9年目の2004年までに、シロイヌナズナのゲノム上に MBF1 遺伝子が3つ存在し、どれも転写因子からの調節信号を TBP に受け渡す活性を有しており、それぞれ異なった発現調節を受けていることを見つけました。同年、これらのうち2つが組織特異的に発現し、1つが熱などのストレスで激しく誘導されることを見つけ、ストレス応答に深く関わっていることが分かりました。翌年、これら3つの MBF1 がシロイヌナズナの細胞の核小体に局在していることを見つけました。その後、米国の研究者らにより、この転写コアクチベーターが植物にストレス耐性を付与する上で重要な因子であることがわかり、ストレス耐性を持つ新機能植物開発のターゲット遺伝子としても注目されています。最近、体内で MBF1 の機能を抑制した植物を作り観察したところ、葉が極端に小さくなり、これが細胞分裂をせずに核だけが倍加するエンドリデュプリケーションの抑制によって引き起こされていることを発見しました。

転写活性化因子に関する基礎研究(分子生物学):

ステロイドを検出するバイオセンサー開発の応用研究(合成生物学):

基礎研究の側ら、「応用研究テーマ」として、1998年以降の10年間、「ヒトのステロイドホルモンの活性を検出できる新機能植物(植物バイオセンサー)の開発」に取り組んできました。研究開始後7年目の2005年には、植物バイオセンサーを用いて、簡便で超高感度なエストロゲン検出法を開発し、国際特許をとりました。その翌年(2006年)、この植物バイオセンサーを用いて、南米産の41種類の薬草に含まれるエストロゲン活性を調べたところ、エストロゲン活性・抗エストロゲン活性を含むもの21種を発見しました。このことにより、「植物バイオセンサーが、天然物からのステロイドホルモン活性物質のスクリーニングに極めて有効である」ことを立証し日本語の総説にまとめました。その後の研究により、甲状腺ホルモンバイオセンサー・副腎皮質ホルモンバイオセンサー・黄体ホルモンバイオセンサーを新機能植物として開発し、現在、3報の論文としてまとめつつあります。また、協力して研究開発をしている企業との連携によりビジネス化が進行中です。さらに理化学研究所のケミカルライブラリーを活用した共同研究により、全種類のステロイドホルモン活性物質を選抜できるシステムを完成させ、あらゆる天然物からのステロイドホルモン活性物質の選抜が簡単にできるようにしようとしています。

植物ホルモンに関する研究(植物分子生理学):

これらの研究は、名古屋大学農学部にて助手として手掛けた研究が主要な部分を占めています。

大腸菌における転写調節メカニズムの基礎研究(分子生物学):

大阪大学医学部の博士課程在学中に行った研究です。

DNAマイクロアレイ開発の応用研究(分子生物学):

日本最大のDNA合成能力を有する北海道企業である「シグマジェノシスジャパン」と、ヒタチソフトウェアの子会社「DNAチップ研究所」の協力のもと、DNAチップコンソーシアムを造り、その代表を務めました。コンソーシアムからは全国500名の分子生物学者にDNAマイクロアレイを供給し、日本で最初の日本オリジナルのDNAマイクロアレイを構築し、普及させました。

痛風原因遺伝子のクローニング(基礎医学):

博士号取得後に最初に就職した横浜市立大学医学部の助手として手掛けた研究は、遺伝病である高尿酸血症(痛風)の原因遺伝子であるキサンチン脱水素酵素遺伝子のクローニングでした。これは哺乳類からクローニングされた世界最初のキサンチン脱水素酵素遺伝子となりました。

科学教育学関連:

大学生用の生物学の教科書としてレーブン/ジョンソン生物学(上・下)の翻訳委員会の委員として、翻訳しました。小学生の理科実験の指導書としてわくわく・びっくりサイエンス教室全5巻・わくわく自由研究全2巻を単著で執筆しました。