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北海道大学 大学院地球環境科学研究院 環境生物科学部門 生態遺伝学分野 早川研究室 (Hayakawa Lab, Faculty of Environmental Earth Science, Hokkaido University)

野生動物 x 行動 x 生態 x 進化 x ゲノム


野生動物の行動・生態・進化をゲノム解析で研究しています

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早川研究室に興味のある高大生の方へ

このページを見ているということは、きっと動物のことが大好きで、近い将来、動物の研究をしたいとか、動物に関わる仕事をしてみたいとか考えている方だと思います。 チンパンジーやニホンザル、コアラといった動物の名前をキーワードにしてこのページを発見された方もいるでしょう。当研究室では、野生動物の「おもしろい」行動や生態について、「フィールドワーク」と「ゲノムサイエンス」という手法をもちいて研究しています。

■「フィールドワーク」とは

「フィールドワーク」とは、外に飛び出してそこで出会ったものを調べる試みのことです。野外調査と訳すこともありますが、少しニュアンスが違います。現地調査という訳の方が近いでしょう。「飛び出す外」というのは、あなたの家の庭先でもいいですし、学校の校庭でもいいですし、動物園や博物館でも構いません。とにかく非日常の中で新しいものを探す試みのことを言います。

「野生動物のフィールドワーク」とは、あなたにとっての非日常の中に暮らす動物について調べることと言えます。動物園で飼育されている動物を観察しにいくのも「フィールドワーク」ですし、博物館の剥製や標本を見に行くことも「フィールドワーク」です。動物園の飼育員さんや、博物館の学芸員さんと話をすることも、野生動物を介した非日常での出会いですので、「フィールドワーク」と言えますね。

例を出しましょう。あなたは一日にどれぐらいの生物と関わっているでしょうか。朝の食卓に並ぶのはほぼすべて生物に由来します。通学路の風景でどんな都会であっても、路傍の雑草、街路樹と小さな虫、空を飛ぶ鳥など、生物を見ないことは絶対にありません。そもそも私たち人間自身が生物です。数え切れないほど生物に出会っています。日常のあらゆるところにアンテナを立てて、生物のことを考えるだけで大事な学びになります。この日常に気づきが、すでに非日常です。そこに深い洞察を加えて、休みの日に山や海、動物園・水族館や博物館という非日常の中に答えを探しに行けば、立派なフィールドワークです。特別な先生や、特別な実験室がなくても、すぐにはじめられそうですね。

しかし、そうは言ったものの、フィールドワークにはもうひとつ大切なことがあります。報告です。フィールドワークで得たことを、記録に残して整理して、仲間にわかりやすく伝えて、議論して新しいフィールドワークに繋げる。それをできる相手が、同輩の仲間や、身近な後輩・先輩・先生、そして私たち大学の研究者です。SNSで市民に発信することもできます。フィールドワークとコミュニケーションは不可分なものです。ぜひ人との対話を大切に、フィールドワークを始めてください。

■「ゲノムサイエンス」とは

「ゲノムサイエンス」とはなんでしょうか。生物は細胞でできています。細胞の中には遺伝子があります。遺伝子はDNAという分子からできています。DNAは、細胞の特徴や性質を決定します。細胞は分裂する際、この遺伝子をほぼ完全に複製します。そうして、細胞の特徴や性質は、分裂した細胞どうしにほぼ完璧に受け継がれます。多細胞生物を構成する細胞はほとんどまったく同じ遺伝子を持っていますが、使い方を変えます。その結果、いろいろな機能を持った細胞が集まって、複雑な動きができるようになります。

たとえばヒトは数十兆個の細胞でできています。ひとつひとつの細胞には、約30億個の塩基という単位がつながってできたDNAがほぼ正確にコピーされています。このDNAには、数万個の機能を持った遺伝子(※厳密には「タンパク質をコードする配列」と言います。)が刻まれています。遺伝子が刻まれていない部分も、何らかの機能があり、遺伝します。これらの遺伝するすべてのDNAの総体をゲノムと呼びます。

さて、「ほぼ完璧」に受け継がれるとか、「ほとんどまったく同じ」遺伝子を持っているとか、微妙な表現を使ったのに気づいているでしょうか。実はごくごくわずか、約30億個の塩基のたった数個の数えるほどくらい、正しく複製されません。これを変異といいます。変異はその後の細胞分裂で受け継がれていって、中には細胞の性質を変えてしまうことがあります。この蓄積が、個体差です。私とあなた、ヒト同士の間では、0.1パーセントくらいの塩基が違い、これが顔かたちの違い、体質、はてやものの考え方などの生まれつきの個体差を生み出しているのです。子どもが、母親と父親の中間的な形質を持って生まれてくるのも、ゲノムの変異が半分ずつ受け継がれた結果です。

ゲノムの変異の蓄積はやがて地域の違い、生物種の違いとなってあらわれます。動物の行動や生態が種や集団や個体によって違うのもゲノムの変異に由来するものが多いです。こうした違いが生じてくる過程が「進化」です。

「ゲノムサイエンス」とは、こうしたゲノムの変異を、いろいろな生物で探る学問のことです。「野生動物のゲノムサイエンス」とは、対象を野生動物として、その動物の生態や行動の「おもしろさ」を生み出したゲノムの変異を見つけ出し、明らかにすることです。(少し)特別な実験室が必要になりますが、野生動物のことを知らなければ始まりません。野生動物のことを知るきっかけは「フィールドワーク」です。

フィールドとゲノムの両方の行き来する面白さを、当研究室から感じてもらえればと思います。

■ もっと学びたい「フィールドワーク」と「ゲノムサイエンス」

「フィールドワーク」や「ゲノムサイエンス」を学ぶ本はたくさんあります。私が研究してきた霊長類でしたら、愛知県犬山市の「日本モンキーセンター」という霊長類専門の博物館・動物園が監修した『霊長類図鑑』が、双方の視点でわかりやすく書かれているのでオススメです。私も監修に関わりました。

しかし、フィールドワークの目的は、知らないことを探しに行くこと。答えはありません。ゲノムサイエンスが本格的な学問となったのもここ10年という、つい最近のことです。理科の教科書には、まるですべての自然現象に答えがあるかのように書かれていますが、実際の学問にはまだ正解がないことの方が多いです。そもそも正解があるかどうかもわかりません。それが学問であり、科学です。座学ではなく、何度も述べたように、庭先へ、街角へ、野山へ、動物園へ、フィールドワークに出かけてください。

もっと学びたいと言う方は、ぜひ大学のフィールドワークやゲノムサイエンスの研究室に相談や見学をしてください。当方の北海道大学理学部や大学院環境科学院では、定期的にオープンキャンパスをしています。オンラインでも開催していますので、札幌市内の方はもちろん、市外や道外の方も、ぜひ気軽に参加してください。そしてぜひ、進学も考えてみてください。

● 北海道大学・理学部生物科学科(生物学)の案内は ⇒ コチラ
● 北海道大学・大学院環境科学院の案内は ⇒ コチラ


地域や日程の都合でオープンキャンパスに参加することが難しくても、大学の多くの先生は、高校生・大学生の方(もちろん熱意があれば中学生以下の方でも!)の相談や見学を、いつでも歓迎しています。

相談や見学の希望の折には、ぜひメールをください。大学の先生に連絡することは緊張するかもしれませんが、おそれずメールをください。忙しかったり出張に出ていたりするとすぐには返事ができないかもしれませんが、できる限り思いにこたえたいと思います。

(2019年10月23日、了。)
(2022年3月31日、加筆。)

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当研究室への進学を希望される大学生・大学院生の方へ

興味を持ってくださり、ありがとうございます。生態遺伝学分野・早川研究室は、2019年4月にはじまった、まだまだ歴史の浅いラボですが、 生物の研究に関心のあるすべての方に、門戸を開く気持ちで運営しています。

当研究室を希望される学生には、前例にとらわれない自由な視点と発想で、野生動物を相手に面白い研究を、新しい手法をもちいて挑戦していただければと考えています。いっけん無謀に見えるチャンレンジに対しても、研究室メンバーがお互いにサポートしあいながら、実現を目指せればと思います。

ぜひ、当研究室を見学ください。入学したての学部1年生から、研究真っ最中の卒研生や修士の方まで、遠慮なくお越しください。メールをいただければ、日程調整します。遠方で札幌まで来にくいという方も、まずはメールでご相談ください。

当研究室では、野生動物を対象に、行動観察や生態調査をおこない、統計学や遺伝学・ゲノム科学の手法を組み合わせて、行動や生態のメカニズムや進化を明らかにするというスタイルを取っています。

2021年度までには、以下のような卒業論文・修士研究を指導してきました。

  • 非侵襲試料を用いた日本の飼育ハリモグラにおける遺伝的多様性と性別の解析
  • 鯨類の授乳において乳児が味覚を利用している可能性
  • 樹液食哺乳類の腸内細菌叢の網羅解析
  • オナガザル科グエノン類における種間ゲノム浸透と混群形成の関連の研究
  • コアラのユーカリ食適応に関する分子遺伝学
  • 単孔類の視覚適応に関する分子遺伝学と行動解析
  • 着床遅延に関連するヒグマ母体での免疫系トランスクリプトーム変化
  • アミメキリンの網目模様パターン下の真皮におけるトランスクリプトーム解析


対象とする野生動物は何でもありですが、特に霊長類(チンパンジー、ニホンザル、スローロリスなど)、有袋類(コアラ、フクロモモンガ、タスマニアデビルなど)、単孔類(ハリモグラ、カモノハシなど)を重点に置いています。北海道に固有の哺乳類や、そのほかの哺乳類を研究している大学院生も所属しています。爬虫類・鳥類・両生類、魚類や無脊椎動物の研究など、哺乳類から離れていくほど、専門ではなくなりますが、気楽にご相談ください。

好きな動物の面白い生態や行動を調べる。簡単なようでチャレンジングなことです。ぜひ一緒に研究の可能性を探していきましょう。

(2019年10月23日、了。)
(2022年3月31日、加筆。)


問い合わせ先(研究室代表者)

〒060-0810
北海道札幌市北区北10西5
北海道大学 環境科学院 C807
早川卓志

メールはこちら
電話(直通) 011-706-4524