北海道大学 大学院 環境科学院 生物圏科学専攻

フィールドサイエンスの拠点

生物圏科学専攻について

われわれが住む地球の豊かな環境は生物が創り出してきたと言っても過言ではありません。約38 億年前に出現した光合成細菌は、それまで空気中や海水中に豊富にあった二酸化炭素と水とから、太陽エネルギーを使い、有機物と酸素を作りだし、その結果、酸素が海水と大気中に徐々に蓄積していきました。さらに、原核生物が原始真核生物に共生し、より効率よく光合成をおこなう藻類、植物が進化すると、大気中の酸素分圧はさらに上昇し、約10 億年前にはオゾン層が形成されました。これにより地上に降り注ぐ紫外線量が急激に減少すると、植物は陸上へと進出し、森林と腐植土層を発達させ、陸生動物の適応放散を可能にしました。現在、この地球上には既に確認されているだけでも約175 万種、未発見種を加えると1000 万種を超える生物が生息すると推定されています。私たち人類もそのような地球環境の中で進化してきた生物の1つの種なのです。

さて、この人類は、その創造力によって、自らをとりまく環境を食料の安定供給や快適な生活のため改変してきました。そのことが人口の増加をもたらし、地球上の人口は、2019 年には77 億人を越えたと推計されています。それに伴い地球環境はこれまでにない速度で変化し、数多くの生物が棲み場所を失い絶滅へと追いやられてきました。たとえば、この400 年の間に約160 種の鳥と130 種の哺乳類が絶滅し、現存種の中でも約10 %の鳥や哺乳類が絶滅の危機に瀕しています。昆虫などの小さな動物では人に発見されることもなく既に絶滅してしまった種も少なくないと思われます。さらには、化石燃料の大量使用による大気中の二酸化炭素濃度の上昇、そしてそれに伴う地球温暖化が進行しつつあります。このような地球環境変化に対して生態系がどのように反応するかについて、さまざまなことが言われていますが、まだ確固たる予測はありません。物質循環や生物間相互作用などを考慮した包括的な検討が必要とされています。

また、近年の抗生物質耐性菌の出現は、薬剤など新規化合物の創出が感染性生物を変化させ、それが人類の新たな脅威となりうることを示しています。さらにDNA 操作技術の進歩は、これまで自然界には存在しなかった生物を創り出しており、創出された遺伝子組み換え生物は人類に対し、直接的な影響だけでなく、生態系攪乱を通して間接的にも影響を及ぼす可能性があります。しかしながら、我々の知識は、こうした諸問題に対処するためには、いまだ十分とは言えません。今こそ私達は、生態システム、生体システム、遺伝システムのより一層の理解を進め、地球環境保全に向けた包括的対策を早急に策定する必要があります。

生物圏科学専攻は、生化学や分子生物学から生態学や生産学まで、あらゆる生物学分野の知識と技術を駆使し、これらの地球環境問題に関する基礎的・応用的研究を行うとともに、多様な講義と研究指導を通じて、将来この分野で活躍できる優れた若手研究者の育成を目指しています。本専攻は9コースから成っており、コース紹介に記されているように実に多様な研究分野のスタッフを擁しています。これは生物が絡む地球環境問題の複雑性に対応しており、学生は自分が所属するコースに留まらず、必要に応じて他コースのスタッフのアドバイスを受けることが可能です。地球環境・生態系の保全が緊急の課題である今日、一人でも多くの若者が生物圏科学専攻の門をたたかれるよう、切に希望します。

北海道大学 大学院 環境科学院 / 地球環境科学研究院

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