重金属結合低分子量蛋白質メタロチオネインは生体にとって有害な重金属の解毒および、必須微量金属の恒常性の維持に重要な役割を果していると考えられていますが、未だにその明確な生理作用は不明のままです。メタロチオネインの重金属結合の機構を知ることはその生理作用解明への手がかりとなることを期待して研究を開始しました。まず、メタロチオネインの大腸菌発現系を構築し、その発現系を用い、メタロチオネイン遺伝子に様々な変異を導入したミュータントメタロチオネインを発現させました。その発現蛋白質の精製標品の分光光学的解析および重金属との結合能の解析を行うことにより、メタロチオネインの重金属結合に重要な役割を果たしている領域および特定のアミノ酸残基を現在研究中です。さらに、脳内に存在するメタロチオネインのイソ蛋白質(神経成長抑制因子作用が報告されています)の発現実験および、重金属の結合と神経成長抑制活性の関係を明らかにするため、新たな培養細胞を用いた系の構築等に関して鳥海君が頑張ってくれました。
ヒト・メタロチオネインの構造と重金属結合の概念図