宿主と寄生虫の自然史

キーワード

生活史進化、共進化、宿主操作、行動操作、生物指標

 対象生物

エゾビル、サルミンコーラ、吸虫、鉤頭虫

絶滅危惧種である若手寄生虫学者(?)の片平君が本研究室に来てくれてから、多くの新しい視点が加わりました。寄生虫の一部は人にも害を及ぼすため悪い印象を持つ人も多いと思います。しかし、寄生虫は生態系の中で膨大なバイオマスを占め、時には宿主の行動を改変して生態系の中で重要な役割を担っていることが最近の研究から明らかになってきています。また、寄生虫は我々には考えつかないような多様な形態や多様な生活史を持ちます。例えば、多くの寄生虫では複数の宿主を乗り換えながら順次成長し生活環を閉じます。その中では宿主の行動を操作し、次の宿主に移動しやすくなるような手段も取ります。このように普段目にすることのない寄生虫ですが、驚くような複雑な生き方を進化させています。

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オショロコマの0歳魚に吸い付いた吸血性のエゾビル

本研究室では、魚類の寄生虫を中心に宿主との関係性や謎に包まれた生態について研究しています。また、寄生虫の遺伝子を調べることにより宿主の移動分散についても推定しようと試みています。まだ仮説の段階で、本当にあるかどうか分かりませんが、寄生虫が宿主の生活史を改変するかに着目しています。具体的には、吸血性のヒルや甲殻類がサケ科魚類の回遊行動を促進するか、を調べています。外部寄生虫が付着することのストレス、あるいは成長率の低下を介して降下移動する可能性が考えられます。その他にも、寄生虫ならではの興味深いテーマも沢山あります。興味のある方は話を聞きにきて下さい。