摂南大、増田さんとの共同研究がプレスリリース&Editor’s choice!

摂南大学の増田太郎さん達との共同研究がプレスリリースになりました。

T Masuda, Y Shimono, D Kishi and I Koizumi (2023) Systematic headwater sampling of white‐spotted charr reveals stream capture events across dynamic topographyJournal of Biogeography 50, 453-466

河川源流部のイワナの遺伝子を調べると過去に河川の大規模な連結・離脱(河川争奪)があったことが分かる、という研究です。生物の情報から昔の地史が推定できるという学際的な研究です(ニホンザリガニの遺伝子を調べると津軽海峡が繋がっていた(かも)ことが分かる、という以前の研究と似ていますね!)。また、本州西部において河川源頭部同士の地理的距離が1km以内であれば過去にイワナ個体群が遺伝子を混ぜ合わせていた可能性が高いことが定量的に示されました。陸を通じて移動できない淡水魚はこのような河川自体の動きを利用して分布を広げてきたのですね。

この研究は讀賣新聞北海道新聞Science Japanなど多数のメディアに取り上げて頂きました。

さらにすごいのが Journal of Biogeographyという生物地理学の世界的なLeading journalでEditor’s choice(編集員イチオシ!)に選んで頂きました!

もっと驚くのは、これが増田さんの生態学デビュー作なのです!!!

増田さんwithシューストレミング

祝!生態学デビュー。シュールストレミングで乾杯(真ん中が増田さん)

増田さんは2021年3月の生態学会オンライン大会で知り合いました。コロナ禍で初めてのオンライン大会だったのでポスター発表してみたのですが、誰一人として私の発表(ZOOM)を聞きに来てくれませんでした。。。orz  そんな中、唯一来てくれた聴衆、、、それが増田さんでした。神様に見えました。放しちゃいけない、引き留めておかなくちゃ!って(笑)

増田さんは当時、京都大学で食品科学、タンパク質工学の研究をされていたのですが、より自分の興味に近い生態学(イワナ学?)を始めようと思っていたそうです。なので私のオショロコマの発表を聞きにきてくれました。

しかも話をしてみると私と同い年で釣りが好きということで意気投合してイワナ(オショロコマ)の話で盛り上がりました。増田さんは研究の傍ら、休日には源流にイワナ釣りに行きまくっており「テンカラ太郎」として10年近くにもわたってブログをつけていたようです。そして、そこでコツコツ集めていたDNAサンプルを解析しようと思っている、と。

研究者としてはプロですが何ぶんの生態学系は初めてなので「もしよかったら共同研究してくれませんか」とオファーを頂きました。素晴らしいことに同じ京都大学に北大出身で植物生態学を研究している下野嘉子さんがいるからMIGseqを教えてもらっている、とのこと。おぉ〜、やっぱり世界は狭いですね〜。

そこからはトントン拍子で、研究進めるのが速いこと、速いこと。分野の違いもあるのか、当然本人の能力もありますが、すごいペースで解析、論文を仕上げてきました。最初は魚類学的な内容だったのですが、こんな感じで意義づけすれば良いですよ、って幾つか主要論文を渡して、大枠の修正案を出したら、次には完成度が劇的に上がって、どんどん洗練されていきました。学生にも同じような指導をしているのですが、分野が違ってもやっぱり基礎があると全然違いますね。ほんと1言ったら10返ってくるといった感じです。学生と比べるのは失礼ですが、それでも学生達も5年ほどかけて頑張ってD論を仕上げているのに、わずか数ヶ月でそれを軽く超えてくるような改定を見せられるとさすがに衝撃でした。

あとは元々サンプリングデザインが非常に良くて、生態学の論文は読んでいなくても感覚として「何が知りたくて、そのためにこんな場所でサンプルを集めれば良い」というのが分かっていたのでデビュー作がこんな良い論文になったのだと思います。サンプル地点が足りないところは、私の大学院時代の戦友である岸大弼君にお願いして、さらに良い感じになりました。ここでも昔の繋がりが活きてきて感慨深いものがありました。

増田さんには私のメインフィールドである空知川上流部にもきて頂きました(冒頭写真)。みんなで釣りや潜水を楽しんで、シューストレミングで最大のおもてなしをしました(笑)

今後も良い関係を続けていけそうです。よろしくお願い致します!

シューストレミング

Johan (Watz) 印のsurströmming。2年間の封印が解かれて今目覚める。。。