2021年の業績など諸々更新

新年になったのでHPを色々と更新しました。
久々にメンバーページを見たらみんな個人HPを作っていて、おぉ〜って感じでした (^^)
みんな写真やデザインめっちゃ綺麗で素晴らしいですね。

更新した業績など幾つかピックアップします。

サルミンコーラの論文が(ようやく)出版されました。

      • Ayer CG, Morita K, Fukui S and Koizumi I (2022) No apparent effects of the buccal cavity attaching parasite, Salmincola sp. (Copepoda: Lernaeopodidae), on a stream salmonid: a mark-recapture study. Ichthyological Research, online early
      • Hasegawa R and Koizumi I (2021) Relative importance of host dependent vs. physical environmental characteristics affecting the distribution of an ectoparasitic copepod infecting to the mouth cavity of stream salmonid. Ecological Research, 36, 1015-1027
      • Hasegawa R, Ayer CG, Umatani Y, Miura K, Ukumura M, Katahira H and Koizumi I (2022) Potential negative effects and heterogeneous distribution of a parasitic copepod Salmincola edwardsii (Copepoda: Lernaeopodidae) on Southern Asian Dolly Varden Salvelinus curilus in Hokkaido, Japan. Parasitology International, online early

 

汐泊サルミンコーラ3

一見イケメンイワナですが実は口にサルミンコーラがついています。知識がなかった頃は気持ち悪い寄生虫だな、と思っていましたが、今ではついていたら嬉しいし、サルミンコーラがカッコいいとさえ思ってしまいます。ちなみに、昔の写真を見返してみると「これは?!」と研究対象として興味を持ったのは2014年10月のことでした。

 

研究のきっかけは口内に寄生するサルミンコーラがイワナの成長低下を介して生活史分岐(降海型 vs. 残留型)にまで影響すれば面白いな〜、という着眼点でした。そして2016年当時M1だった守田KDの調査ついでにサルミンコーラの影響を調べたのがAyer et al.です。ただ、ここでは影響が見られなくて、ダメか〜、とモチベーションが下がっていたのですが、その後新しく入ってきたハセがこの調査系を劇的に発展させてくれました。彼が学部4年生の時に「興味があるなら知床のサンプルがあるから調べてみたら?」と渡したサンプルを計測・解析してみたら、サルミンコーラの負の影響が示唆されました(Hasegawa et al. 2022)。この論文は査読者に種同定が甘いと言われて、過去に当研究室でポスドクをしていた片平くんに協力を仰いで、ハセ自らで分類学を学びました。最初の投稿から2年が経ち、ようやくアクセプトになりましたが、色々と勉強させてらもい結果的には非常に貴重な経験になりました。その後も順調に研究を進めて、サルミンコーラのかなりロバストな影響が分かってきました。KD達が行った最初の調査は何らかの条件(環境、個体群)が違っていたんだと思います。数年の野外調査だけでは結論できないという良い教訓でした。ネガティブな前例があったにも関わらず、興味を持って再調査したハセの好奇心と行動力は素晴らしいな〜、と。その後の彼の一連の研究は多くの学会賞を受賞して(後述)論文も着実に投稿しています。メインの研究は解析・執筆に少し苦労していますが、最終的には良いアウトプットになると思います。

Jasonの腸内細菌論文が出版されました。

    • Anders JL, Moustafa MAM, Mohamed WMA, Hayakawa T, Nakao R, and Koizumi I (2021) Comparing the gut microbiome along the gastrointestinal tract of three sympatric species of wild rodents. Scientific Reports, 11, 19929

彼の学位論文の第1弾です。都市の動物の腸内細菌叢が面白そうだと思ったのは10年近く前でしたが(都市化→食性変化→腸内細菌変化→行動変化)、ようやく形になりました。私に知識やスキルがなかったので時間がかかりましたが、Jasonが異国の地で研究者ネットワークを作ってくれて本当に頑張ってくれました。この論文を土台にした2本目は結構良いところに行くと思っていたのに意外に苦戦しています。近年大きな盛り上がりを見せている腸内細菌研究の最先端に半歩遅れてしまったかも知れません。。。ただ、新規性は確実にあるし、3本目に関しては都市化と腸内細菌と腸内寄生虫と種間比較のコンボなのでまだまだ期待できるかな〜と思っています。Jasonは現在オスロ大学のポスドクとして新しい研究を急ピッチで進めているようですが、D論も並行して形にしてくれると期待しています。

OB達の論文が出版されました。

  • Atsumi K, Lagisz M and Nakagawa S (2021) Non-additive genetic effects induce novel phenotypic distributions in male mating traits of F1 hybrids. Evolution, 75, 1304-1315
  • Uchida K, Yamazaki T, Okubo Y and Yanagawa H (2021) Do green park characteristics influence human-wildlife distance in arboreal squirrels? Urban Forestry & Urban Greening, 58, 126952
  • Yuta T and Nomi D (2019) Breeding biology of Eurasian nuthatches in northern Japan. Yamashina Institute of Ornithology, 51, 62-67

私はこれらの共著者に入っていませんが小泉研時代にメインで行われた研究で、それなりに協力させてもらったので研究室の業績リストに入れさせて貰いました。みんなが別刷りを送ってくれて、独立した研究者になった証として非常に嬉しかったです。まず、渥美君の論文は博士在学中に「是非中川震一さんのところに留学してみなよ〜」と勧めて始まった共同研究です。小泉研でもこの研究内容で何度かセミナーをしてくれたり、投稿前の原稿も読ませて貰いました。研究の詳細は本人がAcademistに分かりやすくまとめています。渥美君は非常に優秀で一般論が好きだったし、自分一人につくのはもったいなかったので在学中にもいろんな研究室を勧めました(笑)オーストラリアの留学体験記は小泉研ブログの中でも最も好きなもののひとつです。初めての留学でのワクワク感とイケイケ感。ほんと自分が始めて海外(フィンランド)に行った時の新鮮な気持ちを思い出させてくれます。若いって良いな〜、って感じです。現在、海外学振としてGil Rosenthal博士のもとで研究しています。イタリアを満喫しているようでめちゃくちゃ羨ましいです!

うっちーはほんと独立記念論文って感じです。彼がD2くらいの時に北大の工学研究院で都市計画(生物とは無関係)を研究していた同期(友人)と始めた共同研究です。おそらく当時から独立して研究したいという想いがあったんだと思いますが、この研究の詳しい内容はあまり話してくれませんでした。あ〜、きっと自分だけの力で研究をやりたいんだな〜、と想像しながら静観していました。ちょっと聞いた感じではかなり異分野の融合で面白そうだな〜と思っていました。ただ、博士論文でかなり苦労していたので論文化は結構先かな〜という感じでした。うっちーは入学当初からアイデアやセンスは良かったけど論理構成や文章表現が苦手だったので、学位取得後も正直やや心配な部分もありました。ところがどっこい海外学振でUCLAに行って、めちゃくちゃ頑張ってビックリするくらいの成長を遂げていました(2021年度日本生態学会奨励賞(鈴木賞)も受賞しました!)。原稿を書いた時に共著になってくれないかと改めて打診されましたが、自分は当初からこの研究にはほぼ関わっていなかったし、アイデアから自分でやったんだから最後まで一人でやってみなよ、と言いました。送られてきた別刷りを読んだら論理構成も英語もしっかりとしており、おぉ〜、完全に独り立ちしたな、という印象でした。最初から優秀な学生よりも凸凹がある学生の方が成長を実感した時は感慨深いものがありますね (^^)

最後はちょっと前の論文になりますが、油田&乃美のシジュウカラコンビですね。上に関連させると彼らは最初から優秀な学生でした(笑)この論文出版の報告を受けて特に嬉しかったのが、小泉研OBが大学院時代のデータを使って書いた最初の論文ということと、彼らが大学以外のノンアカデミアで働いていいながらも(鳥類の調査は続けていますが)、ちゃんと英語論文を出版していたことです。雑誌の編集者には、一見地味だが非常に価値が高い基礎研究だと言ってもらえたそうです。データが取りづらいゴジュウカラの繁殖生態ですが、2人で行った合計6年分のフィールド調査の成果です。立派な長期研究ですね。

ちなみに当研究室の業績としては載せていませんが、D3の富田君が昨年立て続けに論文を出版しています。実質的な指導教員である日浦さんとの論文だけでなく、単著論文、他の教員との共著論文など、すごいペースで論文を書いています。学振にも採用されており、完全に独立した研究者として活動しています。ヒグマの研究は社会的な関心も高く、2021年にはいろんなニュースで紹介されました。詳しくは、是非彼のHPをご覧ください!

Tomita K and Hiura T (2021) Reforestation provides a foraging habitat for brown bears (Ursus arctos) by increasing cicada Lyristes bihamatus density in the Shiretoko World Heritage site. Canadian Journal of Zoology, 99, 205-212
Tomita & Hiura (2021). Disentangling the direct and indirect effects of canopy and understory vegetation on the foraging habitat selection of the brown bear Ursus arctos. Wildlife Biology, 2021, wlb.00886
Tomita (2021) Camera traps reveal interspecific differences in the diel and seasonal patterns of cicada nymph predation. The Science of Nature (Naturwissenschaften), 108, 52
Tomita & Makoto (2021) Development of experimental mesocosms for cicada nymphs Graptopsaltria nigrofuscata: methodology and research recommendations. SOIL ORGANISMS, 93, 207-212

この他、D1の中君が寄生虫学を専門にしている他大学のポスドクと共著論文を出し、M2の今野君が学部時代のサブワークを国際誌に載せています。学生時代から他研究室、他大学と共同研究できるのは素晴らしいです。どんどん研究ネットワークを広げて貰いたいと思います。

Naka M and Nitta M (2021) New host and locality records of Gyrodactylus rarus (Monogenea: Gyrodactylidae) from Pungitius tymensis (Gasterosteidae) in Hokkaido, Japan. Biogeography, 23, 80-87
Konno T and Tsukagoshi A (2022) Crayfish co-introduced symbiotic ostracod found on native crab in Japan: The first record of epibiont ostracod found a new host. Parasitology International, 86, 102475.

 

学会での口頭発表賞、ポスター発表賞。

第54回日本魚類学会年会 最優秀発表賞 古澤千春・小泉逸郎「ブラウントラウトの行動睡眠」
日本寄生虫学会・日本衛生動物学会第67回北日本支部合同大会 若手奨励賞 (口頭発表賞) 長谷川稜太・小泉逸郎「口に寄生された魚は釣られにくいか:イワナに寄生するカイアシ類ナガクビムシの影響評価」
第68回日本生態学会年会 最優秀ポスター発表賞 長谷川稜太・大槻泰彦・古澤千春・植村洋亮・中正大・小泉逸郎「寄生虫感染個体の低いボディコンディション:原因か結果か、両方か」
第36回 個体群生態学会 (第3回環境DNA学会合同大会) 最優秀ポスター賞 長谷川稜太・大槻泰彦・古澤千春・植村洋亮・中正大・小泉逸郎「寄生虫の感染は新たな寄生虫の感染を引き起こすか:イワナとサルミンコーラを対象とした標識採捕による検証」
2019年度 日本生態学会北海道地区会 若手研究奨励賞(口頭発表賞)長谷川稜太・小泉逸郎「イワナに寄生するカイアシ類における感染率の生息地間変異と宿主への影響」

ほぼハセの業績ですが(笑)違う研究内容でことごとく発表賞をもらっているのは素晴らしいですね。研究内容だけでなくプレゼンも非常に分かりやすいのがポイントだと思います。千春ちゃんの睡眠研究もとてもユニークで面白いです。次は是非出版論文として紹介したいと思います。

 

以上、束の間の正月休みに更新してみました。また卒業研究指導が再開するので次の更新は数ヶ月後かな(笑)